私の肩書は、私
「ベトナム移住」「女性の働き方 海外」「自分の居場所 人や社会とのつながり」「認知症 親 海外介護」——
この本は、そういう問いを抱えて生きてきた人に届けたい一冊です。
まだスマホもゴミ分別もなかったころの日本を飛び出して彼女が降り立ったのは、戦後復興の真っ只中のベトナム。女性が当然のように経済活動の第一線で働き、工場の社長も博物館の館長も女性だった社会。そこで小松さんは30年間、生活者として根ざし、人と人のつながりの中で「私らしい生き方」をみつけていった。
刊行の直接のきっかけとなったのは、50年ぶりに再会した出版社の元同僚との縁だった。帰国後の生活適応に必死だった小松さんだが、企画が動き出してから「ベトナムでの30年間を書きたい」という思いが一気に形になっていった。
ベトナムを訪れると懐かしく感じる光景がある、と彼女は言う。ご近所さんからランチに誘われれば、指定の時間より数時間前に伺い、一緒に買い物をし、ご飯を作るところから参加する。そんなおしゃべりを楽しみながら空間と時間を共有する文化は、かつての日本にも確かに存在したものだ。
第3章に収録された「ベトナムの梵鐘」をめぐるエピソードは、本書の核心の一つ。1977年の梵鐘返還運動に関わった縁から現地で問い合わせを受けた小松さんは、外国人という立場の制約を抱えながら大捜索を開始する。
読後に残るのは、人と人との繫がりへの深い信頼だ。嬉しいこと、ショックなこと、すべてを経験した上で、小松さんは人との繫がりを非常に大切にしている。その姿が、本書のいたるところから浮かび上がってくる。
返還されたはずが再び消えた梵鐘。外国人として多くの制約がある中で捜索に奔走したエピソードを詳しく語っていただきました。
故郷で居場所を失ったお母様をベトナムへ。ご近所の縁が母の笑顔を取り戻すまでの物語。
「翔んで」というタイトルに込めた意味と、45歳移住への決断の裏側を語っていただきました。
寄せられる感想で、一番心に残ったというエピソードがみなさんそれぞれで違っている。多くの経験に基づいているからこそ呼べる共感で、本当に嬉しい感想です。
— 藤本涼子氏(そらの子出版代表)昔から女性が経済活動の第一線で働き続けるベトナムの日常を、生活者の目で伝えます。
家族や高齢者をとても大切にするベトナム。失われた日本の温かさがそこに。
太平洋戦争〜返還〜再び消失。謎を追う展開は純粋に読み物として面白い。
あらゆる役割を担いながらも一貫して「私」であり続けた人間の記録。
逆カルチャーショックの記録は、今の日本社会を外側から映す鏡にもなります。
30年をそこで生き、繫がった者だけが書ける、かけがえのない記録です。
新刊時だけでなく、この本はずっとここにあります。
検索でたどり着いた方も、SNSで見つけてくれた方も、ようこそ。
45歳でベトナムに翔んだ女性の、30年の本物の記録がここにあります。