日常の向こう側 ぼくの内側
横尾忠則 No. 701
2025.7.21 海の日などで三連休。
ぼくには不思議な能力があって、と言っても3年ほど前からだけど、本を開いて読み進めると、すでに黄色のマーカーで行を塗りつぶしている個所に時々出合う。最初はマーカーですでに引いていたと思ったが、新刊にも引いてある。チェックされた個所には結局、再びチェックを入れることになる。
2025.7.22〈アフリカに日本蟻に似たコロコロ太った蟻の取材にテレビ局の人達と行く。さっきまでバスのシートに沢山いたのに忽然と消滅。池田満寿夫がその蟻についての本があるから読めというが、その蟻はついに二度と現れることはなかった〉という夢を見る。
絵を描く時はあまり考えないが、描き始めて時に考えることがあるが、これが実に愉しい。考えないことと考えることのバランスが絵なのかなと考える。
南雄介さんと愛知県美術館の長屋さんが来訪。寄贈作品について検討する。
2025.7.23 実業之日本社のオーナーの白井さん、社長の岩野さんら来訪。財団法人の説明を聞く。
竹中直人さんと対談。30年振りに会うそーだ。最近は突然変異に変身はしなくなったそうだ。あれはあれで面白かったけれど、やっぱり無理をしていたのかな。実業之日本社の日記のプロモーション対談だったけど、ただの雑談で終った。
2025.7.24 吉田カバンのリュックのデザインを頼まれているが、口頭でデザインする。
神戸の美術館から山本さん、仲井分館長が紺綬褒章の賞状やメダルを持参。収納庫がいっぱいと聞いていたがまだ40点ばかりは収納可能と聞く。普通は絵を売るために描くのだが、そうじゃなく貰ってもらうために描くというこの逆転現象を起こしているのは美術館?美術界?
大谷5試合連続ホームラン。
2025.7.25 ISSEI MIYAKEのパリコレの来期の春夏のショーのインビテーションカードの打合せ。デザイナーの近藤さん、越智さん来訪。ファッションというより造形作品で、造形に合わせて無理やりに着るというファッションは、肉体否定で面白い。次の絵のシリーズは、かつて描いた過去の作品を眺めていると、ISSEI MIYAKEの絵画化はどうかな? 破棄してもいい作品ばかりだ。そんなガラクタ作品を塗りつぶすなり、描き加えるなりして別の作品に仕上げてしまうという作品のシリーズを描くのも面白いかもと思う。
2025.7.26 一向に首痛治らず、早朝から鍼治療を受ける。アトリエはクーラーがガンガン効いているので、首が冷えたのでは? 首にタオルを巻いて温めてみると、意外と効果がある。自分の中の主治医の診断は大したものだ。
GUCCI展が3ヶ月延長されたので追加作品を6点描く。夫婦の肖像はこれで打ち止め。しばらくは嫌いな読書でもするか。読むとすればやっぱり谷崎に落ちつきそう。
2025.7.27 〈ヨーロッパのスラム街で車を降りて散策するが、所々に座ってこちらを見る人の目が気になって、逃げたくなる。しばらくした頃、仲間らしい人が迎えに来てくれて、家の一角の地下に降りると、そこは劇場で、ぼくの席は確保されていた。周囲は貴婦人ばかりで、挨拶されるが顔見知りではないが、その中にベジャールがいたので安心する〉という夢を見る。
朝から大谷38号を打ってくれた。
11時から気分転換のためにヘアーカットにjabへ。従来とはスタイルを変えてみた。作品のスタイルを変えるようにイメチェンはできなかったけれど。
久し振りに駅前の桂花でフカヒレソバ。以前に比べると味が濃くなって麺がかたい。自転車を乗り捨てに鍵をしないでどこにでも止めるが、盗まれたことがない。鍵をしていた頃は2、3度盗まれたが、鍵をしなくなってからは盗まれないのは、持ち主が近くにいるか、すぐ戻ってくると思うから盗みにくいようだ。大谷39号出るか!?(よこお・ただのり=美術家)