日常の向こう側 ぼくの内側 No. 711
横尾忠則
2025.10.6 カルティエのエレーヌ・ケルマシュターさん来訪。イッセイ・ミヤケの洋服のぼくのロングスカーフとネックレスのデザイン着用。パリのカルティエ新美術館のオープニングに100人の作家を選出。自作の大作、肖像画などが展示されるが是非見たいけれど、長時間の飛行は無理。出品作家のほぼ全員が元館長のエルベの選出だが、彼はカルティエを退職してしまった。
2025.10.7 磯崎新さんの元事務所の建築家の吉野さんにアトリエを少し改造してもらうことになりその打合せを。
ドジャース勝つことは勝ったけれどロバーツ監督のデーター野球は面白くない。負けた試合はロバーツのせいで、勝った試合は選手のせい。今日も9回でサッと佐々木を出せばいいのに、他の救援投手を出してボコボコに打たれ、2アウトになって、やっと佐々木を出す。佐々木は2球で打ち取り、セーブ。
2025.10.8 〈軽井沢のような避暑地にある美術館(セゾン美術館ではない)に昔の丸山明宏のような人が2人来て、「あなたの作品はどれか」と聞く。大きい写実的な風景画が目に入ったので「これだ」とデタラメに答える〉という夢を見る。
〈仲間が集まって何かやろうよ、ということになると、だいたいは雑誌を作ることになるが、大したものもできないことは最初からわかっている〉という夢を見る。
相変らず首は痛む。すでに持病化してしまっているが、人生の最後に大きいお荷物を背負ってしまったものだ。
西脇の岡之山美術館のサムホール展の受賞作を選ぶので、審査員の出原均さんと、山﨑均さんの2人「均」さん。それに市役所の人達が大挙来訪。どの作品もこの作品も生理的に不気味なものが多い。一億総画家になったような風潮が不気味化させている?
全篇クライマックスのインド映画「RRR」を観る。2度目かな。
2025.10.9 〈原宿のラフォーレの跡に市場がある。そこに知り合いのおばちゃんがいて、時々、甘い物や、食べ物を買いに行くが今日はそのおばちゃんはいない。従業員の女の子が言うには、何か家庭的に問題があって、このところ店を休みっぱなしだという〉夢を見るが、この市場には夢の中で何度も来ていて、おばちゃんと話すのが楽しかったが、今日の夢では会えなかった。もう今日の夢を最後にここには来ない気がしてきた。
日本橋高島屋から新しい応接ソファが来た。牛6、7頭分でできたソファだという。
面白くない本の書評を書くことになったので、面白くない書評を書いた。
2025.10.10 ドジャース戦。佐々木3イニング9人を押さえる快投。大谷は打てない。佐々木が大谷の人気を奪った感あり。
南天子画廊が移転するサヨナラ展(個展)のオープニングに大遅刻して出席。客は外にあふれ、中は満員電車混み。もう誰が誰だかわからないまゝ。終って夕食会に出席。
2025.10.11 〈長男に父が死んだあとのことをこんこんといい聞かす〉夢。
長野に帰省していた北沢さんが来訪。近未来の計画が始動し始める。
2025.10.12 〈繁栄していた頃の郷里の町の蓬莱橋の下を流れる川に細江英公さんの撮った大村崑の全裸の写真が何枚も立てかけてある〉という夢を見る。
〈日ハム戦の試合を見に行こうと「週刊新潮」の種井さんとタクシーを探すが、一向に来ない。フト通りに新庄監督がいたので、彼に頼んで彼の車で連れていってもらうことになった〉という夢を見る。今週は沢山の短篇の夢を見る。現実がだんだん面白くなくなったので丁度いい。
今日はアトリエで一日、送ってきた雑誌「ムー」を読む。(よこお・ただのり=美術家)
