e.o.プラウエン著『おとうさんとぼく』
土居 安子
文字なし6コマ漫画。おとうさんとぼくが、海に向かって石投げをして遊んでいるが、石がなくなってしまい、すごすごと帰る。おとうさんは、夜の間に荷車で石を運んでおき、次の日、ぼくは、大きな石の山を見つける(「すてきなおとうさん」)。時には、ぼくにいたずらを仕掛け、時にはぼくの前で権力者をやりこめるおとうさんを描いたe.o.プラウエン(本名エーリヒ・オーザー)による134編の漫画は、1934年から1937年まで、ドイツの当時もっとも広く読まれていた週刊紙「ベルリングラフ」に連載された(上田真而子による解説「e.o.プラウエンについて」より)。オーザーは、当時親交のあった「芸術家3エーリヒ」(作家ケストナーと編集者クナウフ)の一人で、その中で戦後まで生き延びたのはケストナーだけだった。1931年にオーザーは、男性がおしっこで鉤十字を描いている風刺画を発表している。そう思って作品を読むと、クスっと笑いながらも、著者の家族や社会への思いを読まずにはいられない。(木本栄訳)(どい・やすこ=大阪国際児童文学振興財団理事)