日常の向こう側 僕の内側No.684
横尾忠則
2025.3.17 春めいてきたせいか首の痛みは気温と無関係ではなさそう。明日から首の湯治のために草津へ一泊二日の予定で、GUCCIのスタッフも同行。妻と徳永が道中が長いので、無謀な行動に思えて反対するが、行動を決めるのは思考ではなく肉体の欲求。
西脇で大島渚監督の「新宿泥棒日記」とあがた森魚監督の「僕は天使ぢゃないよ」の、出演している映画の上映とトークショーを開催するが、65年前の自分など見たくないので出席せず。
トゥーヴァージンズの浅見さんがY字路の画集と写真集の装本ダミーを持参。5月頃に出版の予定。
草津方面の天候が急転、大雪の予報のため草津行きは延期。
2025.3.18 〈砂漠のような広大な土地に寝そべっていると、南さんがやってきて、ここで自由に何をしてもいいというが、首が痛いために無限地獄の苦痛を味わう〉という夢はそれ自体が現実。
東急文化村の高野さんが「バレエ遠野物語」の衣装のデザインが決まったのでポスターを4月14日までに制作の依頼。この首の痛さが治らないと絵も描けない。
駅前の小林外科のマッサージを受ける。マッサージ師から首の関節の奥が痛むために全体に痛覚が拡がっていると、論理的な説明を受ける。週に2、3度の施術が必要らしい。
宮内勝典さんがカトマンズからのポストカードを送ってくれる。海外でフト思い出してくれるのは嬉しい。帰国されたら会っとかないと、時間がない。
MLB開幕戦見る。先はドジャースが一勝。
2025.3.19 あくびをしても首は痛い。
草津行きを予定していたので今日は来客なし。
絵も描けず、エッセイも書けず。まるで生きた屍同然。首を1ミリも動かせない。
ドジャース、カブスの第2戦。佐々木の乱れる投球に不安。3回で降ろされるが大谷のクレームのつきそうな怪しい1号ホームラン。
2025.3.20 〈郷里の八幡神社の杜の中にある美術館で個展。初日に7、8万の来客があったが学芸員は10万人を予定していたという。1日に7、8万人も入れば、不満など言うことないのに〉と思う夢を見る。
コンビニで焼芋とサンドイッチのランチを買ってアトリエへ。気温が高いので首への影響はどうだろう。
2025.3.21 〈野外にベンチが並べられていて、すでに石原慎太郎さんと女性評論家が席についている。「石原さん今日は」と彼の隣りの席に着く。2人の共通の話題はいつも三島さんのことになる〉という夢。
熊本から便秘の先生の大腸肛門病センター高野病院の髙野正太先生来訪。週刊新潮の便秘の記事を見て、会いたくなったら、上京時に伺います、と編集者の種井さんと来訪。楽しい便秘話に花が咲く。
世田美展のカタログの校正上る。カタログというかアートブックになった。
小林医院へリハビリマッサージに。20日以上その痛みに耐えかねているが……。
2025.3.22 首のマッサージしたにもかかわらず痛い。
午前中痛みをこらえて絵を描く。痛そうな絵になる。
この病は放っとくしかない。その内いつか忘れるだろう。
2025.3.23 久し振りに暖かい。一気に桜が咲くのでは。
首の痛さが最高潮に。午後、鍼の藤森先生の往診。小一時間の間に痛みが見違えるほど軽くなってきた。ぼくは鍼の相性がいいようだ。週一で定期的にやってもらいたいが、鍼の患者がいないので大学にバイトのため、中々予定通りに診断できないと。首の治療もバイトでやってくれないかな。
夜になると首はそろそろ痛み出した。この程度なら明日のマッサージは必要ないと思うけれど、それにしてもかれこれ1ヶ月になる。1ミリ動かすだけでも痛かったのが今日は1センチの痛さ。(よこお・ただのり=美術家)