2025/06/27号 7面

日常の向こう側 ぼくの内側 696

日常の向こう側僕の内側 №696 横尾忠則 2025.6.16 もう一度、世田谷美術館の「連画の河」展を見たいというので、美美と徳永4人で行く。この前は妻が車椅子で廻ったので今日はぼくが車椅子で妻が押す。一点一点、作品の成り立ちを説明する。内輪だからできることで他の人には聞かせたくない。学芸員の塚田さんが変った色とりどりのお弁当を用意してくれる。  夕方より、牧島さんが、タマを描いたシルクスクリーンの版画に大量にサインをさせられる。 2025.6.17 〈郷里の床屋に行くが混んでいて、訪ねた時は閉店。食事も抜きで待っていたのにけしからん〉と思う夢を見る。  14日の朝日新聞に、楳図かずおの本をカラーで書評したので大きい反響があったと編集部の星野さんがネットから収集したものを送ってくれる。  ベルリンでのポスター展の準備で北沢さんと、gggの田仲さん、伊藤さんが来訪。ベルリンでは50年前に一度ベタニエンガーデンでポスター展を開いているので、今回で二度目。絵画を評価する人と、ポスターを評価する人が分かれているが、近年この両者を同時に評価する人が増えつつある。ロートレックは一般的にポスターで知られているが、歴とした画家である。またロシアのロトチェンコは美術家からデザイナーに転身した美術家で、ぼくのようにデザイナーから画家に転向した者もいるが、アンディ・ウォーホルはぼくの先駆者で、彼は戦略のためにかつてデザイナーであったことを隠蔽したが、美術の成功によって、前身であったデザインを公けに露出して、デザイナーと美術家で天下を取った。  午後、玉川病院の整形外科でレントゲンとMRIの検査。本人は重症だと思っているが医学的には軽症。意識の力で治癒して下さいと言われる。 2025.6.18 各紙が土曜の夕刊を休刊にするので、わが家の三紙も二紙休刊にする。 2025.6.19 早朝4時半に新聞を取りに行ったら、死んだはずの黒兵衛(妻はおおぐろと呼ぶ)がいて、幽霊かと思った。来なくなっても、エサだけは与えていたので、朝、無くなっているが、この辺にいるハクビシンか狸の可能性もあったが、黒兵衛はちゃんと生きていた。妻は悲鳴を上げておおぐろの生還に欣喜雀躍する。  京都の銭湯を守る運動を起こしているゆとなみ社代表の湊三次郎さん、上野さんがポスターの依頼に。どうしたことか絵の制作が一段落した途端ポスターの依頼が集中。絵を休息してポスターでも描いて小休止しなさいと言われているのかな。  「装苑」でアーティストのMISATO ANDOさんが来訪して対談を。 2025.6.20 夜、野良猫のために玄関にエサを出しているが、エサにほんの少し口をつけた程度。いつものエサに飽きたのかな。  犬山市観光協会の人達が来て、世田谷美術館の個展を鑑賞される。  東京国立博物館の松嶋夫妻が、「連画の河」展を観に。ちょっとナビゲートなどするが一般観客で会場は大溢れ。 2025.6.21 土曜日だけど新潮新書の葛岡さんと週刊新潮の種井さん来訪。連載エッセイを新書判で発刊予定のミーティング。 2025.6.22 午前中、jabでヘアーシャンプー。世田谷美術館の「連画の河」展の最終日なので、ちょっと覗きたくなって午後に行くと、偶然、元タカラジェンヌの男役トップの轟悠さんと轟さんの先輩上原明美さんが来場。27日の誕生日祝いにコムデギャルソンの白黒ボーダーシャツのプレゼントを頂く。塚田さん、徳永とたまたま来ていた長男と館内レストランへ。最終日ということで来客多し。6時閉館間際までグッズ売場は大混雑。2階のインド展に合わせて、インドカレーの販売店からインドカレーのお土産。夕食で食べちゃう。(よこお・ただのり=美術家)