2025/02/21号 4面

未来の図書館

未来の図書館 図書館笑顔プロジェクト著 萬谷 ひとみ  最後に図書館に行ったのはいつですか?  一度も行ったことがない方もいるかもしれませんが、なぜ行かないのでしょうか?  図書館に関するアンケートでは、「本は買うから行かない」「開館時間に行けない」「近くにない」「そもそも本を読まない」といった理由が多く挙げられます。  本書『未来の図書館』は、そんな方々にこそ手に取ってほしい一冊です。  一見、図書館関係者向けの専門書に思えますが、冒頭の詩を読むと図書館へ行きたくなるのではないでしょうか。例えば、永井叔さんの詩「図書館に行く道を…」。  この詩碑がある気仙沼市図書館を訪れた筆者は、本書にその情景を重ねます。座り心地の良い椅子、絨毯敷きのこども図書館、朗読CDや介護本の並ぶ「シルバーコーナー」。図書館が地域の多様なニーズに応える姿が印象的です。  しかし、素晴らしい図書館がニュースになる一方、自分の近所にはないという声も聞かれます。第1章ではそんな現状に対して、図書館の未来を語る「図書館笑顔プロジェクト」から5つの提案が示されています。  ①図書館機能を周知すること  ②図書館の基本機能(資料・施設・人)を整備すること  ③デジタルに対応すること  ④住民の立場で図書館運営を改善すること  ⑤住民、地域、行政・設置主体と共生すること  第2章では「デジタル対応」の重要性が語られます。図書館では、新聞データベースを始めとする有償データベースを契約しており、現在は来館すれば利用できます。これを有償データベース提供側のビジネスモデルにも配慮しつつ、データベースへのリモートアクセス環境を整備し、誰もが24時間365日、どこにいても利用できる図書館を目指すべきだと説きます。例えば、長野県や鳥取県のように、都道府県立図書館が市区町村立図書館を支援する仕組みの拡充が期待されています。  第3章では「情報リテラシー支援」と「地域資料のデジタル化」に焦点を当てています。情報リテラシーとは、情報を読み解き活用する能力を指し、課題解決に繫げる力でもあります。また、地域資料の収集・デジタル化も、より良い地域づくりに欠かせません。卒業アルバムや町会名簿、地域の写真など、公開に配慮が必要なものもありますが、未来に向けた準備が今求められています。  第4章は座談会形式で、なぜ「笑顔」が図書館に必要なのかが議論されています。かつて「図書館は静かであるべき」との考えが主流でしたが、今では静かな読書専用室を設けつつ、賑やかで開かれた空間を提供する図書館も増えています。こうした変化の裏には、本書のプロジェクトメンバーのような取り組みがありました。  最後まで読み終えると、図書館が地域社会に笑顔と活力をもたらす可能性に気づかされ、未来の図書館への期待が膨らむことでしょう。(よろずや・ひとみ=リーディング・リエゾン・パートナー)

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