遍歴と興亡

いま、百年以上かけてつくった国家のイメージが、亀裂の入った鏡のようになった時、われわれ日本人は、しばし辺りを、時間と空間を超越して見渡さねばならなくなった。中国の春秋・戦国の時代を、ヨーロッパの中世を、つまり近代国家成立のはるか以前、国家というものの面影が人々の目に判然としない時代に目を転じ、歴史の時空を思いきり遊泳するとき、二十世紀を生きてきたわれわれの、全く忘れかけた世界が展開してくる。ヨーロッパとアジアという二大陸に生きた近代以前の人間群を、小説の中に蘇生させ、三、四百年を跳び越え、三千年、四千年を振り返ると、そこに何があったか。それは驚異的な現代との近似だ。
著者 中島誠
出版元 講談社
頁数 406頁
発行日 2001-01-15

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