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【What’s New!】週刊読書人2024年2月9日号

【What’s New!】週刊読書人2024年2月9日号

【特集】
対談= 岩内章太郎×長瀬海
<哲学/批評からアクチュアリティを探る>
岩内章太郎著『〈私〉を取り戻す哲学』(講談社)をめぐって

【本紙イントロより】
 哲学者の岩内章太郎氏が『〈私〉を取り戻す哲学』(講談社現代新書)を上梓した。SNSが日常に溶け込んだ現代社会において、〈私〉をいかに維持できるのか? 刊行を機に、書評家の長瀬海氏と対談をお願いした。(編集部)


 往年の読書人ファン向けに、本対談の最初の取っ掛かりを紹介すれば、岩内章太郎さんは竹田青嗣さんの、長瀬海さんは加藤典洋のそれぞれ弟子にあたるということです。竹田イズム・加藤イズムをそれぞれ濃く受け継いだ現在30代の若手の研究者たちが、SNSの問題しかり、現代の生きづらさの問題を哲学的、文芸批評的に紐解く。時代は変わりつつも、批評の精神が受け継がれた対談です。

 冒頭岩内さんは、前著前著『〈普遍性〉をつくる哲学』(NHK出版)と比較しながら、本書について次のように紹介します。

 「『〈普遍性〉をつくる哲学』(NHK出版)では、哲学的もしくは論理的には普遍性をつくることが可能で、その道筋は現代社会にも用意されていることを論じました。自分なりに生活実感に刺さる哲学を考えたつもりでしたが、どうしても「哲学書」の範疇として難しく受け止められてしまった。
 そこで今回の本では、哲学の議論を我々がそこで生きている地べたに引っ張ってくることを意識しました。高尚な議論ではなく、ありありとした実感を伴った「哲学」となるよう、編集者さんと二人三脚で考えていきました。」

 長瀬さんは本書の読みどころとして、「エポケー」(判断保留)に関する記述を挙げます。現象学の概念であるエポケーを、SNSに引きつけながら次のように論じます。

「たとえばSNSで自分とは合わない、率直に言えばムカつく投稿を見かけた時。そのままどんどんスクロールして、ムカつく理由を探し
出そうとしたり、自分に合う意見を探したりすることは多々あるでしょう。でも、そこでスクロールせずに一度自分で考えてみる。」

 この長瀬さんの発言に岩内さんは「判断を保留することの重要性をいかに上手に書くか。どうすれば、サイバースペースで迷子になって困っている人をちゃんと励ますような方法で書けるのか。」と応答します。

 以降も現代の問題を読み解く上で示唆に富む話が続きます。続きはぜひ本紙でお楽しみください。

【今週の読物】

▽論潮〈2月〉(橋爪大輝)(3)
▽文芸〈2月〉(柿内正午)(5)
▽追悼・徐京植(鎌倉英也)(7)
▽映画時評〈2月〉(伊藤洋司)(8)
◇連載=「空間性の探求」(ジャン・ドゥーシェ氏に聞く)(聞き手=久保宏樹)(5)
◇連載=〈書評キャンパス〉夏川草介著『勿忘草の咲く町で』(森初鶴音)(5)
◇連載=日常の向こう側 ぼくの内側(横尾忠則)(8)
◇連載=百人一瞬 Crossover Moments In mylife②・ピナ・バウシュ(小林康夫)(8)

【今週の書評】


〈3面〉
▽片岡大右著『批評と生きること』(長濱一眞)
▽ディーター・ランゲヴィーシェ著『統一国家なき国民』(小野寺拓也)

〈4面〉
▽ラシード・ハーリディー著『パレスチナ戦争』(川上泰徳)
▽ジョー・ラ・バーベラ/チャールズ・レヴィン著『ビル・エヴァンス・トリオ 最後の二年間』(熊谷ヤスマサ)
▽村田和子著『三浦綾子の生涯』(黒古一夫)

〈5面〉
▽ルイ=フェルティナン・セリーヌ著『戦争』(塚本昌則)
▽池澤正晃著『『大漢和辞典』の百年』(円満字二郎)

〈6面〉
▽クロディーヌ・ヴェグ著『私はさよならを言わなかった』(安川晴基)
▽アンドレイ・クルコフ著『侵略日記』(金井啓子)
▽中村佑子著『わたしが誰かわからない』(堀川 夢)

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