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【What’s New!】週刊読書人2024年2月16日号

【What’s New!】週刊読書人2024年2月16日号

【特集】
ビクトル・エリセ×ペドロ・コスタ対談(司会=パウロ・ブランコ)
<バザン・ブニュエル・ゴダール>
第18回リスボン映画祭グランプリ受賞『瞳をとじて』公開を機に

【本紙イントロより】
 ビクトル・エリセ監督『瞳をとじて』が、二月九日から全国で公開されている。『マルメロの陽光』より三一年ぶりの新作となる。『瞳をとじて』は、二〇二三年一一月八日から一七日まで開催された第一八回リスボン映画際「LEFEST」(https://leffest.com/en/) でグランプリに選ばれた。映画祭のイベントの一環として、ビクトル・エリセとペドロ・コスタの対談が行われた。司会は、映画プロデューサーのパウロ・ブランコが務めた。対談の模様を載録する。翻訳は、本紙連載「ジャン・ドゥーシェ氏に聞く」の聞き手と翻訳を務める久保宏樹氏と、映画キュレーターの槻舘南菜子氏にお願いした。
 掲載にあたっては、映画祭責任者のひとりであるアントニオ・コスタと、対談の翻訳に際して多大な尽力をいただいたマルタ・マテウスに感謝を捧げる。(編集部)


本号(2月16日号)では、ビクトル・エリセ監督とペドロ・コスタ監督の対談を、1・2面でお送りします。現在、エリセ監督の新作『瞳をとじて』が、TOHOシネマズ シャンテ他で、順次公開中です。寡作で知られるエリセ監督ですが、新作は『マルメロの陽光』より31年ぶりとなる、まさに待ちに待った一作です。ただ、エリセ監督自身は、30年以上長編を撮っていない映画作家と捉えられるのは、心外のようです。ペドロ・コスタやアキ・カウリスマキらと似たような形で、仕事はつづけてきた、映画表現とはずっとかかわってきたと発言しています(本発言は、web版に収録)。

司会のパウロ・ブランコ(映画プロデューサー)が冒頭発言しているように、ふたりの対話を聴くことは、人が羨むような体験でもあります。それを、本号ではたっぷりお楽しみください。

現在の映画産業や映画製作の現場について、否定的な意見を述べるペドロ・コスタ。映画批評に訪れた危機を語るビクトル・エリセ。二人は、常に共闘してきたのかもしれません。

話は、アンドレ・バザン、マノエル・ド・オリヴェイラ、ルイス・ブニュエル、ジャン=リュック・ゴダールにまで及びます。こうした知的会話が交わされる機会は、なかなかないことだと思います。なお、Web完全版では全18000字を収録。

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つづいて本号8面では、『吉田健一に就いて』(国書刊行会)刊行記念として行われた「吉田健一の文学」の基調講演「吉田健一、光の変容」(松浦寿輝)と、シンポジウム「吉田健一から広がる世界」の報告レポート。こちらも1頁企画の、読み応えある記事になっています。今、吉田健一を読み直すために、必読です。

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書評面からは、各面から1本ずつご紹介いたします。

まずは3面、和田春樹著『回想 市民運動の時代と歴史家』(作品社)。評者は東京大学教授の木宮正史さん。ベトナム反戦平和運動、日韓連帯運動などの市民運動にも取り組んだ、ロシア史研究者・和田春樹さんの歩んだ道のりについて、「成功と挫折が入り混じった活動の経験」であったと評しています。そして、後に続く者は、和田さんから実に重大な課題を突き付けられていると、結びます。

次に4面からは、池尾愛子著『天野為之』(ミネルヴァ書房)。天野は「日本の経済学の草創期を語る上で欠かせない人物である」と、評者である柿埜真吾さん(高崎経済大学非常勤講師)は言います。そして「天野経済学の意義を再評価した本書の功績は大きい」と要します。「ケインズに先行するケインズ理論」を提唱した、天野為之の生涯とはいかに。ロング書評なので、その生涯を俯瞰することもできます。

つづいて5面から。杉浦静著『宮沢賢治 生成・転化する心象スケッチ』(文化資源社)。評者は長瀬海さん(書評家)。宮沢賢治研究者として知られる杉浦静のこの仕事を、「刺激に満ちた研究」であり、その研究を「絶えず駆動させ続ける、原点となるべきものだ」と論じる。本書は、宮沢賢治研究を「ここから始めるための一冊である」と。

最後に、6面から、アリゼ・デルピエール著『富豪に仕える 華やかな消費世界を支える陰の労働者たち』(新評論)。大塩真夕美さん(流通経済大学准教授)の書評を読んで驚いたが、未だ「富豪」と呼ばれる人たちが、ヨーロッパには、少なからず存在するらしい。「瀟洒な大邸宅を構え、優雅に日々を暮らす。朝起きれば、使用人が身支度の手伝いをし、ダイニングテーブルには、ちょうど好みの温度のコーヒーが給仕され、目にも美しい食べ物が並ぶ」。彼らに仕える使用人は、こうした「雇用主に忠誠を誓えば使うほど、多くの報酬を手にする。その中身は給与だけに限らず、アルプスでの休暇や家族の医療費までもが雇用主から与えられる」という。「このシステムを通して、雇用主は使用人に対する「支配する権利」を手中にする」のである。

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連載からは、横尾忠則さんの「日常の向こう側 ぼくの内側」より。亡くなった小澤征爾さんとの思い出を語る。「小澤さんのポスターを作ったことや、2人共赤いブルゾンを着て道でバッタリ、大笑いしたことや、岩手の天台寺での小学校のホールのコンサートに行ったことや、その夜、温泉の脱衣所でロストロポービッチに会って小澤さんに紹介されたこと」などを、懐かしく語る。2014年に、成城学園前の蕎麦屋で撮ったツーショットが微笑ましい。

(A)

【今週の読物】

◇連載=「ロメールと手持ちカメラ」(ジャン・ドゥーシェ氏に聞く)(聞き手=久保宏樹)(5)
◇連載=〈書評キャンパス〉岡田潤作・挿画『こども電車』(江口栞梨)(5)
◇連載=日常の向こう側 ぼくの内側(横尾忠則)
(7)
◇連載=百人一瞬 Crossover Moments In mylife③・ルイジ・ノーノ(小林康夫)(7)
◇連載=戯史 平成紀〈二月〉(安倍夜郎)(7)

【今週の書評】

〈3面〉
▽和田春樹著『回想 市民運動の時代と歴史家』(木宮正史)
▽多井学著『大学教授こそこそ日記』(磯前順一)
▽磯崎新著『デミウルゴス』(鈴木隆之)

〈4面〉
▽池尾愛子著『天野為之』(柿埜真吾)
▽大窪徳行著『哲学と論理』(和田和行)
▽中野高通著『野の仏の風景』(田中英雄)

〈5面〉
▽杉浦静著『宮沢賢治 生成・転化する心象スケッチ』(長瀬 海)
▽若林恵・畑中章宏著『『忘れられた日本人』をひらく』(仲野麻紀)
▽室井光広著『エセ物語』(中村三春)

〈6面〉
▽戸田桂太著『矢橋丈吉を探して』(永田浩三)
▽アリス・ボータ著『女たちのベラルーシ』(安野 直)
▽アリゼ・デルピエール著『富豪に仕える』(大塩真夕美)

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