お知らせ
【What’s New!】週刊読書人2024年3月22日号
【特集】
対談=黒川みどり×河野有理
「個人」に立脚した丸山思想を追う
『評伝 丸山眞男 その思想と生涯』(有志舎)刊行を機に
【本紙イントロより】
戦後日本における最大の思想家・丸山眞男の思想を論理的・内在的に読み解いていく黒川みどり著『評伝 丸山眞男 その思想と生涯』(有志舎)が三月に刊行された。これまで多くの人びとに読み継がれてきた丸山思想を再考すべく、本書著者で静岡大学教授の黒川みどり氏と法政大学教授の河野有理氏に対談いただいた。(編集部)
本稿では、対談のこぼればなしを紹介しようと思います。
「もし今、丸山眞男が生きていたらSNSを活用するのか」。対談の終わり間際に雑談的にお二人に聞いてみたところ、二人とも揃って、「活用する」とおっしゃいました。その理由として挙がったのは『自己内対話 3冊のノートから』(みすず書房)の存在です。そこには本来公開を予定していなかった丸山の「つぶやき」の数々が収められています。自分としては何かしら書き残しておきたいけれども、未編集のものが世に出ることへの拒否感もあったのではないか。そこで河野さんは「丸山眞男鍵アカ説」を提唱し、黒川さんも、丸山が自分の書き残したメモを誰かと共有するとは思いにくいので、あくまで公開範囲は自分のみとする、と鍵アカ説を補強します。
もし、丸山が鍵アカなのであれば、いわゆる「レスバ」も起こり得ない。このことについて河野さんは、丸山は生前ほとんど論争というものをしておらず、批判者にたいしては「軽蔑をもって黙殺する」態度をとっていたといい、「自分は批判をされることに慣れたというか、鍛えた」という言い方を丸山はしていたと黒川さんが補足し、その仮定を裏付けます。売り言葉に買い言葉で無駄にヒートアップすることに意味を見出していなかった。丸山のそういった姿勢は、今SNSを活用する人にとって見習うべきところが多いのではないでしょうか。
なお、対談本編では、本書の読みどころをたっぷり語っていただきつつ、丸山眞男の人物像、その思想についての考察を深めていきます。本書をすでに読まれた方もそうでない方も楽しめる内容になっておりますので、ぜひご一読ください!(編集部・峰岸)
【今週の読物】
▽著者から読者へ『ジョン・バンヴィルの本棚』 (加藤洋介)(7)
▽著者から読者へ『付言実行』(木本直美)(7)
▽ポケミス2000番の刊行を機に(井戸本幹也) (8)
◇連載=「持続する時間が映画の本質」(ジャン・ドゥーシェ氏に聞く)(聞き手=久保宏樹)(5)
◇連載=〈書評キャンパス〉谷川嘉浩著『スマホ時代の哲学』(福田涼太)(5)
◇連載=日常の向こう側 ぼくの内側(横尾忠則)(8)◇連載=百人一瞬 Crossover Moments In mylife⑧ジョエル・トラヴァール(小林康夫) (8)
【今週の書評】
〈3面〉
▽高橋秀寿著『反ユダヤ主義と「過去の克服」』 (猪狩弘美)
▽高嶋航・佐々木浩雄編著『満洲スポーツ史』 (長谷川怜)
〈4面〉
▽林大地著『世界への信頼と希望、そして愛』 (渡名喜庸哲)
▽鈴木順子著『シモーヌ・ヴェイユ 「歓び」の思想』 (今村純子)
▽佐藤俊樹著『社会学の新地平』(横田理博)
〈5面〉
▽沼田真佑著『幻日/木山の話』(山﨑修平)
▽岡崎武志著『昨日も今日も古本さんぽ』 (南陀楼綾繁)
▽五味渕典嗣著『「敗け方」の問題』(小野俊太郎)
〈6面〉
▽風間研著『挿絵画家 風間完』(三木 学)
▽堀田新五郎著『撤退学宣言』(杉谷和哉)
▽酒井朋子・奥田太郎・中村沙絵・福永真弓編著 『汚穢のリズム』(問芝志保)
〈7面〉
▽榊原洋史著『奄美人入門』(福島 勲)
ベストセレクション【丸山眞男】発売開始
週刊読書人2024年3月22日号の特集に関連して、過去60年間の読書人で特集・掲載された丸山眞男氏の対談や記事をパッケージにして販売いたします。
パッケージ収録号 内容一覧(5本)
①[273]1959年5月4日号
創刊一周年特集号【特集】わが道を往く学問論 ―ある若い知識人との対話(丸山眞男)
②[281]1959年6月29日号
座談会「思想の冒険―思想史研究の新しい前進のために」(大塚久雄・丸山眞男・久野収)
③[306]1960年1月1日号
座談会 一年の後・十年の後―黄金の六〇年か危機の六〇年か(丸山眞男・埴谷雄高・加藤周一)
④[342]1960年9月19日号
【特集】丸山眞男の思想と行動
⑤[342]1996年9月6日号
【特集】丸山眞男氏を悼む 間宮陽介(1面)/笹倉秀夫・都築勉(2面)