お知らせ
【What’s New!】週刊読書人2024年5月24日号
【特集】対談=代島治彦・森田 暁
暴力支配の時代をどう観るか
映画『ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ』公開を機に
【本紙イントロより】
代島治彦監督作品『ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ』が五月二五日(土)に全国公開される。樋田毅著『彼は早稲田で死んだ 大学構内リンチ殺人事件の永遠』(文藝春秋)を原案に、一九七二年一一月に早稲田大学文学部構内で起きた「川口大三郎君事件」及び、その後エスカレートしていく内ゲバの連鎖を、当時を知る人たち含め一八名が証言したドキュメンタリー作品で、冒頭には劇作家の鴻上尚史氏が脚本・演出を手掛けた「川口大三郎君事件」のドラマパートも挿入される。試写会参加者たちからはすでに賛否が飛び交っている本作公開を機に、代島氏と「東大反百年闘争」の当事者であり、七〇年代の運動史にも詳しい森田暁氏に対談いただいた。(編集部)
明後日(5月25日)に全国公開を控えた映画『ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ』は、全国公開の前にもかかわらず、すでに試写会に参加した人たちからの賛否が巻きおこっており、明後日以降、さらに活発に感想、意見、批判が飛び交うことでしょう。
本作に対し好意的な見方をされている識者については、すでにオフィシャルでコメントが上がっていますので、X(Twitter)の公式アカウント「@gewalt_no_mori」などをご覧いただくのがよいと思います
では、誰が批判しているのか。筆頭にあがるのは、文芸評論家の絓秀実さんで、まさに川口大三郎さん同様リンチを受けたこともあり、映画には登場しない当時をよく知るアナザーサイドのおひとりです。絓さんに関しては、雑誌『映画芸術』487号(発売:4月30日)内収録の鼎談で、アナキズム研究家の亀田博さん、芸術活動家の花咲政之輔さんとともに本作及び原案となった樋田毅著『彼は早稲田で死んだ』(文藝春秋)を徹底的に批判しています。
前置きが長くなりましたが、今回の企画においても批判的な意見を収録するという目論見ははじめからありました。そこでご登場いただいたのが「東大反百年闘争」当事者で、70年代の運動史に精通する森田暁さんで、森田さんも基本的には絓さんらと同じ様なスタンスです。そのような批判に対して、監督の代島治彦さんもかねてから「批判は大歓迎である」と公言していたため、今回の対談に趣旨にご賛同の上、参加いただけることになりました。
対談の構成は、森田さんによる時代考証的な振り返りを含めた批判、それに代島監督が応答し、合わせて本作で描けたもの、描けなかったものについてもお話しいただいたという形です。森田さんの批判の部分については、前述の『映画芸術』の鼎談と重なる部分が多く、代島さんの応答は、絓・亀田・花咲3氏へのリアクションのようにお読みいただくことも可能になっています。
いずれにしても、観覧する上で非常に見解の分かれる作品であることは間違いなく、あらかじめ本紙で賛否を踏まえて映画をご覧いただくか、観覧後に本紙を手にしていただくと、「あのシーンはこういった見方ができるのか」という気づきもあると思います。新聞はユーロスペースでも販売を予定していますので、劇場にお越しの際はぜひお手に取りください。(編集部峰岸)
【今週の読物】
▽『月よわたしを唄わせて』出版記念Lⅰveをやりとげて(あする恵子)(8)
▽著者から読者へ=『まんじゅうこわい』(春風亭昇吉)(7)
◇連載=「撮影現場のドキュメンタリー」(ジャン・ドゥーシェ氏に聞く)(聞き手=久保宏樹)(5)
◇連載=〈書評キャンパス〉中山可穂『花伽藍』(川田愛珠)(5)
◇連載=日常の向こう側 ぼくの内側(横尾忠則)(7)
◇連載=百人一瞬 Crossover Moments In mylife⑮・中田久美(小林康夫)(7)
◇連載=戯史 平成紀〈五月〉(安倍夜郎)(7)
【今週の書評】
〈3面〉
▽磯前順一著『生者のざわめく世界で』(荻本 快)
▽ヴォルフラム・フォン・エッシェンバハ著『ヴィレハルム』(渡邉浩司)
▽橋本努著『「人生の地図」のつくり方』(塚本恭章)
〈4面〉
▽法政大学大原社会問題研究所・榎一江編著『無産政党の命運』(金子良事)
▽河崎吉紀著『関和知の出世』(石川徳幸)
▽野上建紀著『近世陶磁器貿易史』(徳留大輔)
〈5面〉
▽千木良悠子著『はじめての橋本治論』(川村のどか)
▽日本近代文学館編『芥川龍之介写真集』(阿部寿行)
▽アイザック・バシェヴィス・シンガー著『モスカット一族』(大宮勘一郎)
〈6面〉
▽稲垣諭著『「くぐり抜け」の哲学』(西貝 怜)
▽鳥越けい子・鷲野宏・星憲一朗著『触発するサウンドスケープ』(宮本一行)
▽竹内順一編『茶書古典集成2 松屋会記』(石田昭義)