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【What’s New!】週刊読書人2024年5月31日号

【What’s New!】週刊読書人2024年5月31日号

【特集】小林康夫×船曳建夫×國分功一郎
全てが変わる、大学も変わる、どのように?
『知の技法』(東京大学出版会)三〇周年記念トークイベント載録

【本紙イントロより】

 四月二十三日、『知の技法』(東京大学出版会)三〇周年記念のトークイベントが、「全てが変わる、大学も変わる、では、どのように」と題して行われた。登壇者は東京大学名誉教授の小林康夫氏と船曳建夫氏、東京大学教授の國分功一郎氏。『知の技法』『知の論理』『知のモラル』三作を中心に、刊行にまつわる闘争の意識から、現在の大学問題まで、熱く愉しい話が弾んだ。会場は駒場キャンパスの生協書店で、オンライン配信も行われた。そのトークの一部を載録する。(編集部)


 本号(第3541号)1・2面の特集では、4月23日に東大駒場キャンパスの生協書店で行われた、『知の技法』三〇周年記念のトークイベントを載録しました。

 登壇者は東京大学名誉教授の小林康夫さん、船曳建夫さん、東京大学教授の國分功一郎さん。

 『知の技法』(東京大学出版会)は発売当初爆発的に売れ、その後も読み継がれています。本紙を手に取る方々の中にも多くの読者がいるのではないでしょうか。

 今回の鼎談は、〈知の実践〉について様々なスタイルで説かれた『知の技法』の、ある種の実践です。〈知〉とは愉快で、ゆるみがあって、なおかつスリリングで、なんとワクワクするものなのか!と感じたその空気が、できるだけ紙面からも伝わればいいなと思います。

 『知の技法』の冒頭には、「教科書に準ずるものとして構想されていますが、しかしけっして半・永久的に通用することを目的とはしていません。逆に、この本の編集の理念は、むしろ「賞味期限」がせいぜい数年であるようなフレッシュな考え方とトピックをあつめることにありました」と書かれています。でも今読み返してもそれはなおフレッシュで、現在の自分のなかに、何らかの〈知〉を芽生えさせ、呼び覚ます、普遍的なものです。

 同時に、教科書として「技法」を提示したから、ぼくらの仕事はおしまい! というのではなく、小林さんも船曳さんも先頭に立って、大学に所属するしないに拘わらず、今の今まで〈知〉の実践――機を捉えては人と会い、その場を引き受けて、そこに何か生みだす――という、地道で具体的で熱いリベラルアーツの啓蒙を続けておられます。そしてそれを受け継ぎ、大学という現場の中で、教育について〈知〉について、考えているお一人が國分さんなのだと思います。

 三〇年という時間は長いのか短いのか……日本がいい方向に向かっているかと問われると、暗い話ばかり頭に浮かんでくるのですが、なぜかこの鼎談は元気がでてくるし、未来への希望に満ちた(と感じる)内容です。

 7・8面では、『2022年のモスクワで、反戦を訴える』(講談社)の著者マリーナ・オフシャンニコワさんに、メールインタビューしています。彼女は、ウクライナ侵攻まもない2022年3月14日、モスクワの政府系テレビ局・第一チャンネルのニュース番組に乱入して、反戦ポスターを掲げ「6秒間の抗議」を行った人物です――というと、あぁあの!と印象が浮かんでくるかもしれません。

 ロシア社会の転換点はどこにあったのか、国内の現状は、ジャーナリストの良心とは……など、抗議を行った当時から、情報戦に巻き込まれSNSで激しい攻撃に晒されたときのこと、家族のこと、国外脱出まで、微に入り細に入り答えていただきました。

 何を継承するのか。今が未来を作るのだと、1・2面のお三方の話とも重ね合わせ、ひしひしと感じています。


【今週の読物】

▽マリーナ・オフシャンニコワ著『2022年のモスクワで、反戦を訴える』インタビュー(7・8)
◇連載=「イオセリアーニの映画作り」(ジャン・ドゥーシェ氏に聞く)344(聞き手=久保宏樹)(5)
◇連載=〈書評キャンパス〉大槻ケンヂ『グミ・チョコレート・パイン』(吉田智美)(5)
◇連載=日常の向こう側ぼくの内側 642(横尾忠則)(7)
◇連載=百人一瞬Crossover Moments In mylife ⑯・マリオ・ヴァッターニ(小林康夫)(7)

【今週の書評】

〈3面〉
▽千葉雅也著『センスの哲学』(星野 太)
▽柏﨑郁子著『〈延命〉の倫理』(香川知晶)
▽クリシャン・クマー著『帝国』(小川幸司)
〈4面〉
▽白石美雪著『音楽評論の一五〇年』(栗原裕一郎)
▽川上幸之介著『パンクの系譜学』(宮入恭平)
▽是枝裕和・川端和治・早大そうだったのか!ジャーナリズム研究会著/メディア総合研究所監修『僕らはまだテレビをあきらめない』(鈴木雄雅)
〈5面〉
▽森川慎也著『40歳から凡人として生きるための文学入門』(太田靖久)
▽ハン・ユンソブ著『ボンジュール,トゥール』(佐野正人)
▽小平麻衣子・井原あや・尾崎名津子・徳永夏子編『サンリオ出版大全』(野中モモ)
〈6面〉
▽内海愛子編『7人の戦争アーカイブ』(成田龍一)
▽山内明美著『痛みの〈東北〉論』(辻本侑生)
▽野口孝一著『明治・大正・昭和銀座ハイカラ女性史』(松岡瑛理)

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