お知らせ
【What’s New!】週刊読書人2024年6月14日号
【特集】
対談=柴田元幸×大宮勘一郎
生が赦され祝福される物語の力
追悼ポール・オースター
【本紙イントロより】
現代アメリカ文学を代表する作家、ポール・オースターが四月三〇日に七七歳で死去した。八〇年代の終わりから、ポール・オースターの作品の邦訳をほぼ一手に引き受け、日本に届け続けている、翻訳家で東京大学名誉教授の柴田元幸氏と、ドイツ文学者で東京大学教授の大宮勘一郎氏に、追悼の対談をお願いした。本紙でのお二人の対談は、二〇一七年五月以来となる。(編集部)
本号(第3543号)1・2面の特集では、ポール・オースターの追悼対談を、翻訳家で東京大学名誉教授の柴田元幸氏と、ドイツ文学者で東京大学教授の大宮勘一郎氏にお願いしました。
現代アメリカ文学を代表する作家ポール・オースターは、四月三〇日に七七歳でなくなりました。柴田さんは八〇年代の終わりから、ポール・オースターの作品の邦訳をほぼ一手に引き受けてきた方なので、もちろん各紙から追悼文の依頼があるだろうと思いつつ、柴田さんにお声をかける以外に選択の余地なしとご連絡したところ、対談ならば、とこころよく引き受けていただきました。お相手には、大宮勘一郎さんをご指名。これは二〇一七年五月の対談のときも同じでした。
前回の対談では、「自己の複数性」「暴力を介在に他者を引き受ける」「偶然の下で傷を負い続ける」といったテーマが語られ印象的でした。今回も対談が終わってなお、「傷とアサイラム」「偶発性と自己の不確実性」「他者の存在を引き継いで語る」というテーマについて、考え続けている自分がいます。
そして、「物語」とは何なのか――。
「ギリギリの場所で、別の誰かの生を引き受けて語る」それによって「互いの生が赦され祝福される」と、今回の対談は一応は閉じられていますが、私の中では全く終わっていないのです。これからもポール・オースターの作品を読んだり、日常の中で折に触れて考え続けるのではないか、と予感しています。(S)
【今週の読物】
▽映画時評〈6月〉(伊藤洋司)(7)
▽読書人カレッジ〈戦後の日本社会に影響を与えた「古典」を読む〉第二回・ジャン=ジャック・ルソー『人間不平等起源論』(王寺賢太)(8)
◇連載=「真の共産主義者イオセリアーニ」(ジャン・ドゥーシェ氏に聞く)(聞き手=久保宏樹)(5)
◇連載=〈書評キャンパス〉小川洋子『博士の愛した数式』(村上拓玖弥)(5)
◇連載=日常の向こう側 ぼくの内側(横尾忠則)(7)
◇連載=百人一瞬 Crossover Moments In mylife⑱・吉増剛造(小林康夫)(7)
【今週の書評】
〈3面〉
▽森一郎著『快読ニーチェ『ツァラトゥストラはこう言った』』(日名淳裕)
▽ジャン=フランソワ・リオタール著『レヴィナスの論理』(平石晃樹)
▽キャス・サンスティーン/エイドリアン・ヴァーミュール著『法とリヴァイアサン』(橋本 努)
〈4面〉
▽北川眞也著『アンチ・ジオポリティクス』 (山崎 望)
▽髙岡豊著『シリア紛争と民兵』(兼原信克)
▽北見継仁編著『知られざる佐渡の郷土史家・蒐集家』(磯部 敦)
〈5面〉
▽オスカー・G・ブロケット/ロバート・J・ボール/ジョン・フレミング/アンドルー・カールソン著『エッセンシャル・シアター』(武田寿恵)
▽丹治伊津子著『漱石・明治・京都』(中島国彦)
▽崔盛旭著『韓国映画から見る、激動の韓国近現代史』(真木由紹)
〈6面〉
▽杉田俊介著『糖尿病の哲学』(頭木弘樹)
▽三浦篤著『大人のための印象派講座』(秋丸知貴)
▽西野嘉章著『眞贋のはざま』(浅間哲平)