お知らせ
【What’s New!】週刊読書人2024年8月9日号
【特集】
藤田直哉×安田峰俊
SNSの功罪、2ch的文化再検討の必要性
『現代ネット政治=文化論 AI、オルタナ右翼、ミソジニー、ゲーム、陰謀論、アイデンティティ』(作品社)刊行を機に
【本紙イントロより】
批評家の藤田直哉氏が『現代ネット政治=文化論 AI、オルタナ右翼、ミソジニー、ゲーム、陰謀論、アイデンティティ』(作品社)を上梓した。刊行を機に対談相手に指名したのは、中国を主な取材対象とし2ちゃんねる(2ch)やネット文化に造詣が深い、同じく氷河期世代のルポライター安田峰俊氏。縦横無尽の熱い対談となった。(編集部)
本号(第3551号)1・2面の特集では、批評家・藤田直哉さんの新刊『現代ネット政治=『現代ネット政治=文化論 AI、オルタナ右翼、ミソジニー、ゲーム、陰謀論、アイデンティティ』(作品社)について、ルポライター・安田峰俊さんとの対談をお願いしました。
本書は「新しいフロンティアが拓かれた!」という一文からはじまります。1995年インターネット元年に、藤田さんは期待に胸をわき立たせながら、ネットの世界に飛び込み、新しい直接民主主義的ユートピアを目指す戦いをしてきた――つもりだったが、それから20年経ち、ネットを通じて自分たちがしてきたことこそが、世界を悪くしたのではないか、と絶望的な認識を受け入れざるを得なくなった、と言います。
そしてその懸念を実体化するように、2022年には山上徹也による安倍晋三元首相銃撃事件が起こります。
先月行われた都知事選にも、あるいはアメリカ大統領選にも、香港や中国の状況にも、2ちゃんねる的匿名掲示板文化は影響を与えている。この「2ちゃんねる化」する社会に、ネットカルチャーを振り返り再検証する必要がある。
それが本書の、そして安田さんとの対談に至る思いだと感じています。
本対談では、2chがネトウヨ化し政治化していく経緯、ポストトゥルースの時代とは何か、陰謀論の政治利用、陰謀論の担い手、弱者男性はいかにして救われるか、戦後日本民主主義国家の図式はどうなっているか、など多岐に亘って語られています。
20年前に、「問題を回避せず、ちゃんと世論を作ったり運動をできていれば、少子高齢化問題などもマシだったかもしれない」「自助会的な、弱かったりつらかったりする人たちが、愚痴をこぼせる場を増やすことを、真面目に考えた方がいい」(対談より)
数々の分断が少しでも緩む一歩目になるよう……まずはこの対談を読んでいただけたらうれしいです。(S)
【今週の読物】
▽論潮〈8月〉(橋爪大輝)(3)
▽文芸〈8月〉(柿内正午)(5)
▽読書人カレッジ@立教大学/戦後の日本社会に影響を与えた「古典」を読む 第四回(渡辺靖)(8)
◇連載=「スノッブな映画を開拓したヴェンダース」(ジャン・ドゥーシェ氏に聞く)(聞き手=久保宏樹)(5)
◇連載=〈書評キャンパス〉中村文則『銃』(渡辺楓)(5)
◇連載=日常の向こう側 ぼくの内側(横尾忠則)(7)
◇連載=百人一瞬 Crossover Moments In mylife㉖・長谷川祐子(小林康夫)(7)
◇連載=American Picture Book Review(堂本かおる)(7)
【今週の書評】
〈3面〉
▽星野高徳著『屎尿処理の近現代史』(北脇秀敏)
▽ピーター・クロポトキン著『相互扶助論』(山本健三)
〈4面〉
▽中村美幸著『百年戦争下のパリでひとびとはどう生きたか』(鈴木道也)
▽武田徹著『神と人と言葉と 評伝・立花隆』(斎藤貴男)
▽岡本雅享・上村英明・窪誠・朴金優綺・朴君愛著『マイノリティ・ライツ』(宮下 萌)
〈5面〉
▽柴崎友香著『あらゆることは今起こる』(大前粟生)
▽モーリス・ゼルマッテン著『雪のフィアンセたち』(西口拓子)
〈6面〉
▽ユリア・エブナー著『ゴーイング・メインストリーム』(吉良貴之)
▽近藤銀河著『フェミニスト、ゲームやってる』(竹内美帆)
▽塩澤幸登著『木滑さんの言葉』(阪本博志)