お知らせ
【What’s New！】週刊読書人2024年8月16日号
【特集】
原島博×宮下芳明×ドミニク・チェン
情報の時代と宇宙１３８億年を見わたす
『俯瞰する知 原島博講義録シリーズ』全10巻（工作舎）刊行開始！
【本紙イントロより】
情報工学者・原島博氏の集大成『俯瞰する知 原島博講義録シリーズ』全一〇巻が工作舎より刊行開始された。「顔学」をはじめ専門を超えて幅広く活躍してきた原島氏は二〇〇九年東京大学を定年退職後、一一年より原島塾（ＨＣ塾）を開催。講義では身近な疑問から宇宙論まで多岐にわたるテーマを取り上げ、専門家ではない視点から新たな学びのありかたを試みてきた。その基礎にあるのは、細分化された専門知に対して、世界全体を見わたす「俯瞰知」。四月に刊行された巻一「情報の時代を見わたす」は、情報技術の通史を一望し、情報社会の未来をデザインする方法を探る。六月に刊行された巻二「宇宙１３８億年から学ぶ」では、宇宙の誕生から人類の未来までを一気に旅する。本シリーズの刊行を記念して、七月五日、東京大学生協本郷書籍部内で、『俯瞰する知』出版記念トークイベントが開催された。ゲストは著者の原島氏が期待する若手研究者、イグ・ノーベル賞受賞者で明治大学教授の宮下芳明氏と情報学研究者で早稲田大学教授のドミニク・チェン氏。著者の原島氏が提唱する「俯瞰知」について大いに語り合った夕べ。その模様を抄録する。（編集部）
《私たちの祖先は、さまざまな情報のしくみを獲得することによって進化してきました。ここで質問です。祖先が獲得した初めての情報のしくみは何だったのでしょうか？》
ハイ！ここでアレコレ考えこんでしまった人は、巻１「情報の時代を見わたす」を開いてみてください。
正解は、ＤＮＡやＲＮＡに記されている「遺伝情報」。
《そして驚くべきことには、この「遺伝情報」はデジタルなのです》
本書はこんな語り口からはじまる。
シリーズ「俯瞰する知」の著者である情報工学者の原島博さんは、「日本顔学会」の設立や東京大学の情報学環・学際情報学府の設立に尽力、文系と理系さらには科学と芸術を融合した新しい学問体系の構築に貢献したのち、東日本大震災直後の 2011 年 6 月から、「思うところあって」個人塾を開催。
講師は原島さん一人、テーマは自分の専門とは関係なく、宇宙の話から生老病死まで、原島さんがそのときに関心のあることを90分話す。その原島塾も毎月開催してあっという間に150回を超えた。本シリーズはその150回の集大成である。
今回の「俯瞰する知 原島博講義録」刊行記念イベントは、東京大学生協本郷書籍部初のイベントとして、まさに「俯瞰する知」を象徴するような書棚に囲まれた店内で開催された。原島さん、宮下さん、ドミニクさんのトークは終始明るいムードで、未来志向のワクワクする内容だったが、「テクノロジーは人を幸せにするのか」「情報技術は次の世界を切り拓くものか、それとも最後の足掻きか」など真剣な議論が交わされた。イベントについては是非本紙でお楽しみ下さい。
著者の原島さんは、「定年後に時間があったから、自分で勉強してみよう。ちょっと俯瞰してみよう」と思われたという。そして、「勉強する時に聞いてくれる人があるだけで嬉しい。自分で勉強するなんて絶対できない。毎月聞いてくれる方があるので出来たことで本当に感謝しかない」とも。自分の専門外のことをイチから勉強して俯瞰する。それはまさに「知の旅」だった。みなさんも原島先生とともに、いざ「俯瞰する知の旅」へ！
【今週の読物】
▽著者インタビュー＝『たぶん私たち一生最強』（小林早代子）（６）
▽映画時評〈８月〉（伊藤洋司）（７）
▽著者から読者へ＝『図書館ウォーカー２』（オラシオ）（７）
▽追悼＝小田光雄（鹿島茂）／槇文彦（五十嵐太郎）／梁石日（金守珍）（８）
◇連載＝「無秩序な世界に目を向けること」（ジャン・ドゥーシェ氏に聞く）（聞き手＝久保宏樹）（５）
◇連載＝〈書評キャンパス〉木下龍也『オールアラウンドユー』（和田七望）（５）
◇連載＝日常の向こう側 ぼくの内側（横尾忠則）653（７）
◇連載＝百人一瞬 Crossover Moments In mylife㉗・森村泰昌（小林康夫）（７）
【今週の書評】
〈３面〉
▽山本義隆著『核燃料サイクルという迷宮』（佐藤嘉幸）
▽ダーク・フォン・レーン著『ハロルド・ガーフィンケル』（城 綾実）
▽下嶋哲朗著『比嘉トーマス太郎』（伊高浩昭）
〈４面〉
▽大森さわこ著『ミニシアター再訪』（のむみち）
▽三舟隆之・馬場基編『カツオの古代学』（白石哲也）
▽ローウェル・ディンガス／マーク・Ａ・ノレル著『ティラノサウルスを発見した男 バーナム・ブラウン』（田中康平）
〈５面〉
▽小田勝著『源氏物語全解読 第一巻』（加藤昌嘉）
▽天野知香著『マティス』（宗近真一郎）
▽野村喜和夫著『観音移動』（岡本勝人）
〈６面〉
▽ピエール=ミシェル・ベルトラン著『左利きの歴史』 （藤林道夫）
▽小沼純一著『リフレクションズ』（村井康司）
