お知らせ
【What’s New!】週刊読書人2024年11月22日号
【特集】
対談=四方田犬彦×中条省平
ゴダールを未完結な存在に引き戻す
『ゴダール、ジャン=リュック』(白水社)刊行を機に
【本紙イントロより】
「ゴダール馬鹿一代」。エッセイスト・批評家の四方田犬彦氏の半世紀近くにわたるゴダールとの歩みをまとめた『ゴダール、ジャン=リュック』が白水社から刊行された。
本書刊行を機に、著者の四方田氏と学習院大学教授の中条省平氏に対談いただき、膨大なゴダール論をひも解いてもらった。(編集部)
本書帯の「ゴダール馬鹿一代」。このインパクトが大きすぎて、思わず本編イントロにも使用しましたが、本書を的確に言い表す文言はこれ以外に見つからない気がします。半世紀にわたり一人の人間を追いかけること、しかも人物伝ではなく作品評論の集成として。見た目以上の“重み”が本書からにじみ出ています。書店で見かけてお手に取る際は、充実の索引にも目を通すことをオススメします。
本書に対して、中条さんは冒頭から賛辞を送ります。その中でも特に際立っているのが、四方田さんが『東風』を論じた「炎から炎」、『パート2』を論じた「イミテーション・ゴダール」、この2つの論説でした。特に問題作『パート2』でゴダールから脱落しかかった中条さんと、それでもなおゴダールとの歩みをやめなかった四方田さん、という2人の立ち位置が際立ちます。
あるいは、四方田さんが『ゴダール/映画史』(奥村昭夫訳、筑摩書房)を読んで、そこにこめられたゴダールの意思を上映会という形で再現してしまったことに中条さんは驚きを隠せず「あそこで四方田さんはついにゴダールそのものになっちゃったんだと思いましたね。」とコメントされています。
ほかにも、今回の対談の大きな読みどころが2面右上の「トリュフォーと並べる違和感」のパートです。常にトリュフォーと並べて論じられるゴダール。この対談の少し前に発売された『ふらんす』2024年9月号の特集「フランス映画の話/歴史(イストワール)」でもゴダール論を四方田さん、トリュフォー論を中条さんが書いており、そのことも含めてゴダールとトリュフォーの性質の違い、ゴダールは誰と並べるのがよいのか、逆にトリュフォーは。この点を明確化します。今回の対談は12000字超のボリューム感のある内容になりました。ぜひご一読ください。
【今週の読物】
▽追悼=細江英公(飯沢耕太郎)(8)
▽著者から読者へ=『歴史を複眼で見る』(平川祐弘)(7)
▽著者から読者へ=『うちの絵本箱』(山田陽子)(7)
◇連載=「ルノアールとロッセリーニ」(ジャン・ドゥーシェ氏に聞く)369(聞き手=久保宏樹)(5)
◇連載=〈書評キャンパス〉佐藤厚志『象の皮膚』(河路健吾)(5)
◇連載=日常の向こう側 ぼくの内側 667(横尾忠則)(7)
◇連載=百人一瞬 Crossover Moments In mylife 40・観世清和(小林康夫)(7)
◇連載=ニュー・エイジ登場 433『sleeping cloth』(田中さとみ)(8)
【今週の書評】
〈3面〉
▽スティーブン・レビツキー/ダニエル・ジブラット著『少数派の横暴』(松井孝太)
▽エミリー・B・フィンレイ著『民主至上主義』(佐藤正志)
▽マーティン・ヘグルンド著『この生』(吉松 覚)
〈4面〉
▽『極北の全共闘』編集委員会編『極北の全共闘』(小杉亮子)
▽永田大輔著『アニメオタクとビデオの文化社会学』(玉井建也)
▽小川雄著『徳川海上権力論』(秦野裕介)
〈5面〉
▽古井由吉訳『古井由吉翻訳集成』(堀 千晶)
▽サマンタ・シュウェブリン著『救出の距離』(福嶋伸洋)
▽先崎彰容著『批評回帰宣言』(川村のどか)
〈6面〉
▽鈴木涼美著『不倫論』(坂爪真吾)
▽石川裕二著『科学と賢治と宗教と』(構 大樹)
▽イアン・ボーデン著『全スケートボード史』(パンス)