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【What’s New!】週刊読書人2024年12月6日号

【What’s New!】週刊読書人2024年12月6日号

【特集】
岩井克人氏に聞く(聞き手=塚本恭章)
〈岩井経済学〉その思考の軌跡を辿る
『資本主義の中で生きるということ』(筑摩書房)刊行を機に

【本紙イントロより】 
 九月二〇日、経済学者の岩井克人氏(東京大学名誉教授・神奈川大学特別招聘教授)が、『資本主義の中で生きるということ』(筑摩書房)を上梓した。専門となる資本主義や貨幣に関する論考のみならず、文学や映画、絵画、あるいはビットコインに関するエッセイまで収録した論集となる。刊行を機に、岩井氏にお話をうかがった。聞き手は経済学者の塚本恭章氏(愛知大学専任教員)にお願いした。また3面には、塚本氏による同書の書評を掲載する。(編集部)


1980年代に学生時代を送った人間にとっては、いつくか必読書があった。岩井克人さんの著書もそれにあたる。たとえば『ヴェニスの商人の資本論』を読んでいなければ、会話に入ることができなかった。経済学を専攻していない文学部や法学部の学生のあいだでも、岩井さんの本は広く読まれていたのである。「貨幣とは…」「交換とは…」などと、生かじりの知識で随分と議論をしたことを覚えている。今回、岩井さんにお話をうかがうことが、ようやくかなった。「私よりも、岩井克人のことをよく知っている」と、御本人に言わしめた塚本恭章さんがインタビューの聞き手であるから、全編読みどころ満載といっていいだろう。アメリカに留学した当時のことからはじまり、まさに岩井克人さんが辿ってきた研究者としての足跡を追体験するかのような対話となった。新著『資本主義の中で生きるということ』(筑摩書房)と合わせてお読みいただければ、〈岩井経済学〉へのよき道しるべとなるだろう。

我々は、資本主義社会の中で生きている。資本主義は「貨幣」を基礎に成り立っている。だから、貨幣について、そして資本主義について考えなければならない。このシステムが欠陥だらけであることは、最早疑うことはできない。格差社会を生み、分断を生み、結果争いに行きつく。けれども、では他のシステムがあり得るのかといえば、現状なかなか難しい。それならば、資本主義を深く理解する必要がある。岩井さんの本は、そのための本でもある。理解もせずに、〈反資本主義〉を掲げても虚しいだけである。難しいことはない。まずは本書を手に取っていただきたい。そして少しでも興味が湧いたら、『経済学の宇宙』や『二十一世紀の資本主義論』、『貨幣論』を紐解かれることをお勧めする。

本号3面には、橋爪大輝さんが、最終回の論壇時評を寄稿してくださっている。今年一年は、世界的に「選挙イヤー」だった。台湾総統選、ロシア大統領選、アメリカ大統領選挙、日本の衆議院選挙、ヨーロッパ議会選挙と、重要な選挙が相次いだ。その中で、やはり民主主義(デモクラシー)について考えざるを得なかった。「民主主義は最悪の政治形態といわれてきた。他に試みられたあらゆる形態を除けば」といったのは、イギリスの元首相・チャーチルだが、この制度も今曲がり角に来ているのかもしれない。橋爪さんの論考を読みながら、そんなことを考えつつ、来年はいかなる年になるのか。思いをはせてみた。是非、お読みいただければ幸いである。


【今週の読物】

▽『聖ボナヴェントゥラ著作選集』(教文館)刊行記念 寄稿=小高毅・山本芳久(8)
▽論潮・12月(橋爪大輝)(3)
▽文芸・12月(柿内正午)(5)
◇連載=「ストローブによるグレミヨン評価」(ジャン・ドゥーシェ氏に聞く)371(聞き手=久保宏樹)(5)
◇連載=日常の向こう側 ぼくの内側 669(横尾忠則)(7)
◇連載=百人一瞬 Crossover Moments In mylife 42・武満徹(小林康夫)(7)
◇連載=戯史 平成紀〈十二月〉(安倍夜郎)(7)
◇連載=American Picture Book Review 91(堂本かおる)(7)

【今週の書評】

 〈3面〉
▽岩井克人著『資本主義の中で生きるということ』(塚本恭章)
▽コモナーズ・キッチン(小笠原博毅・ミシマショウジ・栢木清吾)著『舌の上の階級闘争』(藤原辰史)
 〈4面〉
▽柴田直治著『ルポ フィリピンの民主主義』(木場紗綾)
▽沼野充義・沼野恭子・坂上陽子編著『ロシアの暮らしと文化を知るための60章』(ソコロワ山下聖美)
▽佐藤博信著『都市鎌倉の展開と鶴岡八幡宮の社人集団』(谷口雄太)
 〈5面〉
▽朝井リョウ著『生殖記』(陣野俊史)
▽国立民族学博物館監修/川瀬慈編『吟遊詩人の世界』(真木由紹)
 〈6面〉
▽小澤・デ・シルバ・慈子著『孤独社会』(五十嵐祐)
▽齋藤美衣著『庭に埋めたものは掘り起こさなければならない』(頭木弘樹)
▽栗原康著『幸徳秋水伝』(森 元斎)

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