お知らせ
【What’s New!】週刊読書人2025年2月21日号


【特集】
対談=鈴木 隆×周 俊
<指導者・習近平 その思想の根源>
『習近平研究 支配体制と指導者の実像』(東京大学出版会)刊行を機に
【本紙イントロより】
我々はどこまで隣国の最高指導者のことを理解できているだろうか。徹底した資料の読みこみからその実像を解き明かした鈴木隆著『習近平研究支配体制と指導者の実像』(東京大学出版会)が刊行された。本書刊行を機に、著者で大東文化大学東洋研究所教授の鈴木氏と、昨年『中国共産党の神経系』を上梓した神戸大学講師の周俊氏に本書をめぐって対談していただいた。(編集部)
今、習近平は何を考えているのか。各国政府及び関係機関、政治学者をはじめとするアカデミズム、あるいはジャーナリズムまで、日々、その一挙手一投足が注目され、中国政府やメディアからの公式発表、ネット上の憶測まで流れる情報は枚挙にいとまがありません。そのような膨大な情報群から、いかに正確な情報を掴み取るか。まずは現在に至る足跡、思想の系譜をたどる必要があるでしょう。毛沢東時代の中国共産党史を専門とする周俊さんは本書を「現代中国の「君主論」であり、非常に時宜にかなった研究だと思います」と評し、対談において本書で面白かった点、気になった点をピックアップし、著者の鈴木隆さんに投げかけていきます。
現在の習近平の思想を表しているテキストは何かと周さんが尋ねると、鈴木さんは2025年1月の『求是』に出た論文だと答えます。長いテキストですが、これでもまだ抜粋された内容だといいます。なぜ、そのような措置をしているか、鈴木さん曰く「できる限り本音を隠しつつ、指導者としてのイメージを崩さない」ためだそうです。
>>記事リンク
対談中、習近平の思想に影響を与えた人物が取り上げられます。毛沢東はもちろん、福建省で地方指導者を務めていた時期に見出した厳復という思想家の名前もとても重要です。また、毛沢東との関わり、距離感についても言及がなされます。このあたりの議論も、習近平思想の根幹に関わる内容で、習近平政治の背景にあるものが何かを知ることができます。終盤には、なぜ今習近平という強権指導者が生まれたのか、という議論に発展します。その誕生は偶然か必然か。政治構造の問題か指導者個人の問題か。また、習近平的な指導者が生まれるに至った政治的要因とは何か。本書では書かれていない点も紙面で紹介していますので、ここも必読です。ぜひご一読ください。
【今週の読物】
▽琉球文学大系 28・29『琉球史関係史料1・2『球陽』上・下』(ゆまに書房)刊行記念(石井正己)(8)
◇連載=「アメリカ映画が発展させたもの」(ジャン・ドゥーシェ氏に聞く)380(聞き手=久保宏樹)(5)
◇連載=〈書評キャンパス〉朝井リョウ『正欲』(森本帆風)(5)
◇連載=日常の向こう側 ぼくの内側 679(横尾忠則)(7)
◇連載=百人一瞬 Crossover Moments In mylife 51・ジャン=フランソワ・リオタール(小林康夫)(7)
◇連載=戯史 平成紀〈二月〉(安倍夜郎)(7)
【今週の書評】
〈3面〉
▽沖本裕司著『「沖縄報告」』(大野光明)
▽原武史著『象徴天皇の実像』(瀬畑 源)
▽安齋篤人著『ガリツィア全史』(小島 亮)
〈4面〉
▽ロナルド・ドラブキン著『ラトランド、お前は誰だ?』(川成 洋)
▽庄田慎矢編『古代の酒に酔う』(小倉ヒラク)
▽図書館笑顔プロジェクト著『未来の図書館』(萬谷ひとみ)
〈5面〉
▽シャーロット・ゴードン著『メアリ・シェリー』(矢澤美佐紀)
▽小山内園子著『〈弱さ〉から読み解く韓国現代文学』(柳沼雄太)
▽新・フェミニズム批評の会著『現代女性文学論』(泉谷 瞬)
〈6面〉
▽ジェフ・ヤン/フィル・ユ/フィリップ・ワン著『アジアン・ポップカルチャー大全』(金 成玟)
▽大久保賢一著『「原爆裁判」を現代に活かす』(石田昭義)
▽ヘイリー・キャンベル著『死の仕事師たち』(西貝 怜)