読書人を全部読む!
山本貴光
第19回 書評紙の老舗TLS
「週刊読書人」のバックナンバーをアーカイヴで読める仕組みがあるなら、創刊号から全部読んでみようと思います。という意味のことをうっかり口にしたのが種となり、読むだけでなくそれについて書いてみるのはいかがという編集部のお誘いにこれまたうっかり乗って始めた連載です。遅ればせながら、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、「週刊読書人」の創刊は1958年、元号で言えば昭和33年のこと。かれこれ70年近い歴史があって、目下は1959年に移ったところだった。毎号を広告も含めて余さず読んでみると、限られた紙面とはいえ、やはり時代が映り込んでいて、これがたいへん面白い。しかも、書評新聞でありながら、書評ではない時事評論などにも多くの紙面を割いているのは少し意外でもあった。というのは、1990年代から書評紙を読み始めた読者の印象で、当時から読んでいる人には意外でもなんでもないのかもしれない。
ところで、この連載では、もっぱら「週刊読書人」のバックナンバーを読んで気になるトピックについて書いている。他方で、この機会に本紙以外の書評やその歴史、あるいは関連するあれこれについても、折々触れてみたいと考えている。というわけで、早速寄り道をする。
私が知るなかで歴史の長い書評紙に「タイムズ文芸付録」がある。原題はThe Times Literary Supplement、略してTLSという。紙名は1902年に、イギリスの日刊紙「TIMES」の付録として始まった名残りで、後に独立して発行されるようになって現在に至る。120年以上続いている書評紙の老舗といってよいだろう。
発行は週刊で、毎号30弱くらいの記事が並ぶ。書評が中心で、他に編集部への手紙、クロスワードパズル、詩、エッセイが掲載されている。書評は短いと紙面の半分くらいから、長いと2面にわたるものもあり、たっぷり読めるのが特徴だ。その他、1冊を1コラム(1面は4コラム構成)で紹介する寸評コーナーもある。
表紙は日本でお馴染みの新聞と違って、雑誌のようにカヴァーページがあり、たいていは絵画を全面に印刷した上に、TLSのロゴと号数、主要記事のタイトルが少し並べてある洒落たつくり。記事ごとにも絵画や写真がカラーで添えてあるので目にも楽しい。広告は、やはり本の宣伝が中心で、多くは1冊をバーンとカラー写真で提示しているので、その気がなくても目を惹かれる。私は広告を見てものを買うことがあまりないほうだけれど、TLSの広告は例外で、「わ、面白そう」とそのまま注文してしまうことも少なくない。
最近判型が変わって少し小型になったので、「読書人」などと単純に比較はできないが、全体で48頁ほどあるといえば驚かれるだろうか。これが毎週届くので、「ちょっと待って」とうれしい悲鳴を上げ続けている。内容については次回もう少しご紹介しよう。(やまもと・たかみつ=文筆家・ゲーム作家・東京科学大学教授)
