日常の向こう側 ぼくの内側 745
横尾忠則
2026.6.29 昨日から今朝にかけて美輪明宏訃報一色の報道。朝日新聞の依頼に追悼文を書く。
元宝塚トップスターの轟悠さんと元タカラジェンヌの上原明美さんが誕生祝いにと山ほどのプレゼント。轟さんの舞台「浅茅が宿」を観て以来、宝塚ファンになるが、轟さんの引退と同時に宝塚ファンも卒業。彼女は芸能界に入らないで画家に転向。画家になってもファンは離れないので行動が限定されている。
2026.6.30 今日で今年も半年。これからの時間の経過は早そう。
カタールの王族のカタール美術館庁の議長シェイカ・アル・マヤッサ・アル・サーニーさんとリモートで話す。目下カルティエ現代美術財団で展示されているアーティストの肖像画のカタール版を描いてもらえないかと打診。4年後に個展の開催をと。カタールに来て欲しいといわれるが90歳の老齢にはきついというと、50歳にしか見えないとおだてられる。では私が日本へ行く、ということで話は決まる。
共同通信の竹田さん、美輪さんの訃報の取材。
2026.7.1 〈男風呂に10人ばかりの真黒けの人達に向けてどこかの国の兵士が狙撃。男達がまるでダンスを踊っているように次々と倒れる〉という恐しい夢を見る。
久し振りに不眠に陥る。
妻は玉川病院に徳永と定期診断に。やはり食欲不振が心配。
南雄介さんと都現美の藤井さんが誕生日祝いにデヴィッド・ボウイのTシャツのプレゼント。もう21枚もたまった。藤井さんは喘息で声がでない。オシとツンボの会話は成立しません。
2026.7.2 体調不良で気分転換に美容院で短く刈り上げる。難航していた朝日の書評が髪の毛を短くした途端に一気に書けてしまう。
2026.7.3 久し振りに便秘になる。苦しいので水野クリニックへ。究極の手法で解消する。
「週刊新潮」で健康長寿医療センターの岩切理歌先生と対談。老人病の原因のひとつに食欲がなくなることが最大の原因。食欲不振、味覚音痴、正に老人病真只中。
2026.7.4 〈皇居へ。園遊会に出席するためにモーニングを着用して、胸に勲章をベタベタくっつける〉夢を見る。
妻は一日一回は必ず、「おおぐろが来なかった」と野良猫が顔を出さないことに嘆くが、玄関で夜あげたエサは朝なくなっているので、来て食べているはず。
西脇市の名誉市民の第2号に十倉雅和さんが決まり、お祝いにと肖像画を頼まれる。ご本人には会ったことがないので似ているかどうか。肖像画の批評は必ず似ているかどうかが判断の基準になるので困ったものだ。似顔絵じゃないんだから。頼まれ仕事でもこういう絵は批評の対象にならないので、なんとも困ったものだ。僕の場合は荒木経惟の写真だったが、自画像も面白かったのでは。
気になっていた絵が片づいたので、「週刊新潮」の連載エッセイを3本書く。すでに年内の半年分は入稿済み。年内には来年の一年分、55本も入稿してしまうかな。
今年は大谷のホームラン数は他の日本人に比べると少ないんじゃないかな。本人はどう考えているのだろうか。
2026.7.5 相変らず疲労度激しく、昨日より今日、今日より明日と日に日に追いつめられている実感あり。そんな体力に反撥して、次の絵の準備に入る。今のところ良薬は絵を描く以外になさそう。でも今までなら、体調を崩してもしばらく休養するとか、薬で治ったものが、この歳になると、全く治らないことがわかった。ただただデッドラインに向って堕ちていくという感じだ。(よこお・ただのり=美術家)
