日常の向こう側 ぼくの内側 757
横尾忠則
2026.9.24 昨夜から東京駅の隣のホテルメトロポリタン丸の内にチェックイン。明日早朝の新幹線で京都に行くことになっている。週刊新潮の種井さんとホテルのレストランでカレーの夕食。美味なり。思いも寄らず食欲不振を忘れる。
2026.9.25 午前4時起床。6時朝食。昨日に続いて再びカレーともう一品そうめん。所変れば品変るは真理! 食欲不振はウソのよう。東京駅でJRの人達、週刊新潮のカメラマンと編集者達9人の団体旅行。目的は10月1日から東海道新幹線で個室が再開、その試乗体験。その昔、何度か乗った個室の1/4以下の呼吸が出来ないほど窮屈。これで5万円也。すでに予約殺到とか。5万円貰っても乗りたくないね。顔を見られたくない人専用かな。
京都駅の混雑は外国の観光客が原因では。いたれりつくせりで大型タクシーが駅に待機。向かうはかつて何度か訪ねた三十三間堂。ここも大半が外国人。それにしても堂内の長い廊下は片道120メートルとか、往復で体力テストさながら。コロナ以後、こんなに歩いたのは初めて。
タクシーで京都見物。「YOUは何しに日本へ?」のYOUばかりで溢れる京都に愕然。入った和風喫茶はその昔、高倉健さんと来たことを思い出す。昼食は大市のすっぽんが予約満席で、室町和久傳へ。これもすっぽんかというすっぽん料理は貸し切りだったそうだ。食欲不振どころか過食で苦しい。
4時何分だかの新幹線で帰京。変な旅行だった。
2026.9.26 旅行の疲れが再び食欲不振に。
『文學界』の自伝最終稿を入稿。100枚一挙掲載の予定。
Thames & Hudsonの豪華版の画集送られる。続いて超豪華版は明後日到着とか。普及版だって500頁の、日本では前代未聞の大判。
2026.9.27 相変らず食欲不振。一日三食は止めて小鳥のように一日多食つまみ食いに転向するか。
2026.9.28 どうも食欲と便秘の因果関係をつきとめるが、それがどうした。
福島の蚕養国神社の宮司さんが川口市aの氷川神社の御朱印を見て、ぜひうちの神社もと来訪。
カタール国立美術館から6人の芸術家の肖像写真送られる。いよいよ戦闘開始か。
倉本聰さん死去。一つ年上。いつかUFOの話をしたいねと、しないまま終ってしまった。
2026.9.29 フィラデルフィアのバーンズ・ファウンデーションのメンバー20人アトリエに来訪。質問攻めで彼等の関心事がよくわかった。コレクターの集団だから、やはり購入希望者多し。
2026.9.30 玉川病院へ定期診断。食欲のあるなしは病気ではないでしょ、だけどぼくの場合は病気なんだよね。
アメリカの大手出版社から自伝画集出版のため、今日がインタビューの初日。神戸の横尾美術館の山本さんがインタビュアーになってくれる。訳者の金子さん、編集の上原さんら来訪。
本書は世界40ヶ国から出版されるが、日本は40の中に入っていない、という。商売の相手にされていないらしい。著者が日本人なのにねえ。
2026.10.1 午前中からアトリエでカタールの芸術家達の肖像画の制作にとりかかる。計92点の予定だが2点仕上げる。制作の途上に、 ACC会報『ACCtion!』誌のインタビューの取材が割込む。カタールの人達は伝統的な衣装を着用しているので、全員がユニフォームを着ているよう。男性の大半は鬚を伸ばしていて、頭にはイカールという輪っか、アラビアのロレンスみたいな人達ばかりで、女性は頭から長いヒジャブというスカーフ、何て呼べばいいのか、修道士のようなものをかぶっている。男女共伝統的な衣装着用なので、顔が違うだけで、どの絵も同じような絵になってしまう。色彩もおおかた白で、92人をどう区別しましょう。顔だって全員濃い顔で鬚を伸ばして全員が同じ顔に見えてしまう。展覧会に合わせて画集を出版するらしいが、頁をめくっても、めくっても同じ衣装で同じようなアラブ系の顔ばかりだから、絵の様式を変えるしかない。92刀流に描き分けるしかないが、こんなことって可能だろうか?(よこお・ただのり=美術家)
