書評キャンパス
森岡毅『苦しかったときの話をしようか』
阪田 勇治
私がこの本に出合ったのは大学2年生の春だった。当時の私は将来に対して漠然とした不安があった。だが、この本を読み進めていくことで不安はなくなり、前向きに就活に取り組むことができるようになった。この本は、就活を目前に控えた学生には勿論、働くすべての人に読んでほしい一冊だ。
本書の著者である森岡毅は優秀なマーケターである。彼を知ったとき私は「自分とは違う天才だ。」と感じた。しかしながらそれは間違いだった。
森岡は新卒入社後の数年間は、まったく優秀な社員ではなかった。2年目の夏には、物理的に電話を取れなくなり、当時について「自分の存在意義を自分自身が根底から疑う」状況に追い込まれた、と振り返っている。
この本の基は、就職活動を前にした娘のために、森岡が書いたものだ。しかし就活だけでなく、長い人生をどう自分らしく生きるか、そのためのヒントが、この本には具体的にたくさん挙げられている。その中から、特に私が印象に残った二つの節を紹介する。
一つ目は第3章「自分の強みをどう知るか」の中の、〈ナスビは立派なナスビになろう!〉だ。
とてもキャッチーなタイトルだが、森岡が言いたいことはシンプルだ。本書で森岡は自身の強みを知ることの重要性を何度も説いている。強みとは「自分の「〝特徴〟とそれを活かす〝文脈〟がセット」で初めて発揮される」のであり、特徴を知るうえで行うべきことが「自分が何をすることが好きか」を書き出すことだ。そして森岡は出てきた特徴をもとに人々を3種類に分類し、それぞれが取るべきキャリア戦略を本節にて詳細に説明している。
二つ目は第6章「自分の〝弱さ〟とどう向き合うのか?」の中の、〈「不安」と向き合うには?〉である。
人は不安を感じると、本能的に緊張する生き物である。また生き残るために変化から逃げる傾向があると森岡は言う。例えば、プレゼンテーションを行う際、それが重大であればあるほど、我々の脳はその後に起こる環境の変化を恐れて、緊張を引き起こし、変化への行動の足を引っ張ろうとする。森岡はこの本能について「チャレンジによって起こる変化が大きいほど不安は大きくなる。つまり、不安とは、本能を克服して挑戦している君の勇敢さが鳴らしている進軍ラッパのようなものだ」と指摘している。そう考えたとき、挑戦しない人生、「失敗しない人生そのものが、最悪の大失敗ではないのか?」と我々の背中を押す。
この本を読んで、私は、自分の弱さを受け入れ、どう生きたいかを考えることこそが、人生を強く生きる第一歩だと感じた。
森岡毅はこの本を通して、どんな状況でも自分の価値を見つけ、自分の物語を生きる勇気を教えてくれる。だからこそ私は、この本をただの「就活本」ではなく、「生き方の本」として紹介したいと思った。
最後に本書の中でお気に入りの一節を紹介して終わりにしよう。
「この世界は残酷だ。しかし、それでも君は確かに、自分で選ぶことができる!」
※プロフィールは応募時のもの。
書籍
| 書籍名 | 苦しかったときの話をしようか |
| ISBN13 | 9784478107829 |
| ISBN10 | 4478107823 |
