2026/10/09号 6面

アメリカ文学・研究書特集

アメリカ文学・研究書特集 日本アメリカ文学会全国大会開催を機に 日本アメリカ文学会第65回全国大会に寄せて 大島 由起子  今年の日本アメリカ文学会全国大会は、九州支部が担当し、福岡大学にて開催されます。会場となる福岡大学は、二万人を超える学生を擁する九州最大規模の私立大学であり、そのスケール感はアメリカの州立大学を彷彿とさせます。当学会は一九五六年三月にアメリカ学会から独立して発足しましたが、九州アメリカ文学会の立ち上げはその四か月前に遡ります。先達たちの先見の明と情熱には、今なお誇りを禁じ得ません。  会場となる福岡(博多)は、古代より「遠の朝廷」大宰府や鴻臚館を擁し、アジアとの交流の窓口として発展してきました。また近世には、初代福岡藩主・黒田長政が都市の礎を築いた歴史を持ちます。博多の人々はざっくばらんで人情に厚く、異文化に対して開かれています。祭りも盛んで、ゴールデン・ウィーク中の博多どんたく港まつりも有名ですが、なかでも博多祇園山笠の舁き出しの緊張感と熱気は格別で、締め込み姿の男衆が山車を肩に担ぎ、街を駆け抜ける姿は圧巻です。全国から集う会員の皆様には、この街の熱気に負けない熱い議論を交わしていただくとともに、お時間が許す限り、博多の活気と温かな雰囲気を存分に味わっていただければ幸いです。  今回は、二〇二一年に小説『白鯨 MOBY-DICK』を上梓された作家の夢枕獏氏をお迎えし、「『白鯨』ができるまで」と題した特別講演をいただきます。巽孝之先生のご尽力により、当大会での講演として結実いたしました。遭難した若きジョン万次郎(中濱万次郎)が捕鯨船ピークォド号に救助されるという夢枕氏の想像力豊かな構想には感銘を受けます。  夢枕氏には、二〇一九年に日本メルヴィル学会年次大会(メルヴィル生誕二百周年記念)でも、当時『高知新聞』に連載を始めておられた小説『白鯨 MOBY-DICK』について、「白鯨とジョン万次郎」と題したご講演をいただいております。当日は、高知の関係者も詰めかけ、夢枕氏からの捕鯨船に関する詳細な質問にメルヴィル研究者が答えるなど、白熱した交流が印象的でした。本大会では、その後の執筆秘話や苦労話をお伺いできる予定であり、文学におけるアダプテーション研究の観点からも意義深い知見が得られるものと確信しております。  個人発表に加え、「起源をめぐるナラティブ」や「創造する空白」と題した充実したシンポジウムも企画しております。全国の会員の皆様をお迎えし、実り多き大会となりますよう、九州支部一同、福岡大学の高橋美知子先生を中心に、心を込めて運営に当たってまいりますので、よろしくお願い申し上げます。(おおしま・ゆきこ=九州アメリカ文学会会長・福岡大学人文学部教授・アメリカ文学)