日常の向こう側 ぼくの内側 758
横尾忠則
2026.10.2 相変らず慢性食欲不振、味覚音痴。朝食後自室でカタールの肖像画4点目を描いてアトリエへ。
村上春樹さんアトリエに遊びに。アトリエに絵が並んでいても大半の人は見て見ない振りだけれど、村上さんは熱心に、またほぼ2時間半、画集に首ったけ、こんな来客は滅多にない。村上さんは野球観戦中に突然小説家に。こんなところはぼくがニューヨークでピカソ展会場で「画家になれ」と洗脳された状況とよく似ている。他に似ているところは神戸出身でひとりっ子で育ったので競争心のないところは全く同じ。似てないところは村上さんはジャズ、ぼくはロックだった。著書を2冊頂く。Y字路に興味を持たれていたのでY字路展のカタログを贈る。
2026.10.3 天気がいいのでアトリエへ自転車で。
食欲不振で三食廃してつまみ食いを。
急に腰痛に。急に解消。
カタールの肖像画7点目。
2026.10.4 食べるものがない。食欲難。
2026.10.5 〈各局のテレビの美術番組を一堂に集めて観賞する会場の設立のための集会を計画して、ステージから呼び掛けると久世光彦さんが賛同して登壇してくれ、次々とその数が増える〉という変な夢を見る。
今日でカタール肖像画計8点、あと84点か。
チェコ在住の木暮さんと国書刊行会の清水さん来訪。チェコのブルーノのマルタさん執筆の横尾論の出版の打合せ。
2026.10.6 どうも食欲不振と便秘の因果関係がありそう。
アルゼンチンとマイアミを拠点とするアート団体ファエナアートの人達14人が先週のバーンズ・ファウンデーションについで、アトリエに来訪。
午後、神戸から山本敦夫さん、金子靖さん、上原昌弘さんによるアメリカの出版社Insight Editionsより出版される「YOKOO by YOKOO」の自伝画集の2度目のインタビュー。
2026.10.7 今日は突然食欲不振が解消されたような気分になる。
午前中から昨日のメンバーによる連続インタビューの3回目で終了する。
自宅で夕食後、カタールの肖像画9点目。
いつもは8時就寝だが今日は夜ふかしして12時が過ぎた。
2026.10.8 前夜濃いお茶を飲んだせいか、一向に眠れず。
平凡社の下中順平社長と下中美都さん来訪。三宅一生さんとの出会いを通して色々コラボをしてきたが、その集大成本は如何と打診されるが、これは大ごとになる。A-POCだけなら可能だけれど、体力仕事になるので、考えときましょう。
銀座の森岡書店の森岡さんがお礼にと来訪。何のお礼かよくわからなかった。
成城在住の赤井英和さんとお嬢さんが来訪。
カタール肖像画計9点完成。
2026.10.9 昨夜の不眠、10時間眠って一挙回復。
食べる前から味のわかるものは食べたくない。記憶が大いに影響している。
赤井英和さん、自伝のボクサー映画とドキュメントのビデオを持って来訪。早速映画『どついたるねん』観る。カッコイイ!
YUKIKOMIZUTANIの水谷さん、写楽の木版画にサイン。オックスフォード美術館が全15点コレクションしてくれたと。香港のオークションで行方不明だった絵画を水谷さんが全部購入。その作品と新作をあわせて個展の依頼に。
玉川高島屋が来年3~6月まで新装大型イベント計画のディレクションの依頼に。
妻、玉川病院へ定期診断の結果、先生がびっくり仰天するほど悪い所ないと。
今日も食欲0。
2026.10.10 麺散という原宿の名物うどん屋のポスターを描く。デザインというより、これはアートだね。何をやってもアートになってしまう。2日前からコーヒー党になる。コーヒーは食欲をそそる。
カタール肖像画10点完成。あと82点か。
2026.10.11 食べ物を見ると気持ち悪くなってきた。つまり生きることが気持ち悪くなってきたのだ。お茶も、水まで、飲みたくなくなった。佃煮が美味だった。コーヒーも今日は飽きた。病院もお手上げ。
でも絵だけは気持ちよく描ける。
昼はおにぎり半分がやっと。あとはソフトクリーム。コンビニの支払いが自動になって、さっぱりわからない。
夕食はぜんざい。餅1個食べる。(よこお・ただのり=美術家)
