2025/12/19号 8面

日常の向こう側 ぼくの内側 720

日常の向こう側 ぼくの内側 720 横尾忠則 2025.12.8 妻も玉川病院に定期診断。ぼくは明日行く予定。悪いところだらけ。猫のおでんも目下入院中。横尾家一家絶滅の危機。危機感があって創造があるなんてウソ。  夕方、突然、体調異変。向いの水野クリニックで採血とレントゲン、その他心不全、かろうじてパス。36・8度の熱が一気に36・0度に下がる。心理熱?  「うわぁーこう来たかー! 興奮させてくれます! ありがとうございます」 ほぼ日マンガ部糸井重里さんの感想。  保坂和志さんが対談集を作らないかと打診。文学と美術の対話? その昔、淀川長治さんとの『二人でヨの字』という対談集が出たよね。 2025.12.9 〈田中ナントカという評論家が美術批評をしたいというので西洋美術全集を見せる〉夢。  昨日の水野クリニックの採血結果は心不全、その他も問題なし。  昨日の水野クリニックのデータを持って玉川病院へ。尿の出が悪く前立腺肥大を疑って再び泌尿器科へ。薬で対処できるが続ける必要ありと。内科と呼吸器科へも。喘息が発病しているので吸入器を続けて薬も処方。整形外科で自転車転倒の腰のレントゲン。結果は骨にヒビが入って全治3週間。  玉川病院の帰路、池田動物病院へ。おでんの手術後の容態はボチボチ。名前を呼ぶと無口のおでんが声を上げて反応。何度も呼ぶとメンドー臭いのか尾で反応。入院は延期。自分の容態よりおでんの容態が気になってやゝ不眠。 2025.12.10 京橋のアルテミュージアムへ。石橋財団理事長の石橋館長、松本副館長、学芸員の平間さん、伊藤さんらとの会合。都市の中の美術館はMoMAがモデルに。  帰路、池田動物病院へ。おでんを一時退院させる。帰宅に喜ぶが、まだ不十分の様子。 2025.12.11 〈大草原で映画のような大合戦見物〉の夢を見る。  動物病院と同じ桶を購入するが、おでんは歓迎してくれない。床に放尿。ぼくのベッドの下に逃げ込んだまま。 2025.12.12 朝になってもベッドの下から出て来ない。徳永がエサを食べさせてくれるが、今朝は自力で食べたらしい。自力で食べられれば回復の兆候だが、手術のあとの抜糸の処理が終るまで、夕方より再び入院。  森山大道さん来訪。写真と絵画の合作集の打合せ。以前から交流があったが、1971年に2人でニューヨークへ行って以来、時々、写真を撮ってもらっていたが、今回は友情の証しになるような本になりそう。出版はロンドンのThamesi& Hudsonで、文章は2人の共通の友人のエルベ・シャンデスで実現させたい。  尿が一、二滴だったのが薬の効用か、泡立つほど大量に放尿。やっぱり薬様々だ。  夕方、徳永がおでんを再入院のために動物病院に連れていってくれる。 2025.12.13 息苦しさと動悸、以前のようにスタスタと歩けない。老人用の新車の自転車は多少楽だが、アトリエへは6ヶ所も角を曲がるので人や車に注意しないとまた転倒ってならないように。  アトリエで「週刊新潮」の連載エッセイ1本書く。「矛盾」という自分の性格について。 2025.12.14 〈郷里の実家の前の道を歩いている小さい女の子が、ぼくのハンチング帽を見て「変!」という。そうかな? いつの間にか家の近くにY字路ができていて、そこに2つの画廊がある。物凄い太った女性が話し掛けるが〉何を言ったのか夢が醒めると覚えていない。  朝、小雨。長靴とレインコートで自転車でアトリエへ。アトリエの暖房の効果なし。昨日に続いて「週刊新潮」連載エッセイ、「わがまま」についてと、「神戸っ子」の連載エッセイを書く。  今日のランチは愛妻のお餅弁当。  今日は便通がなくて大騒ぎして救急車を呼ぼうとしたが妻は浣腸の方がいいというので風間が買いに。でも考えてみたら今日一日出なかっただけだ。「なーんだ」と思って、早々に帰宅。日曜日はステーキだけれど、そばと大根おろしにする。(よこお・ただのり=美術家)