2026/04/03号 8面

American Picture Book Review 107(堂本かおる)

American picture book review 107 堂本かおる 「おばさんたちがやってくる!」 主人公の少年には、なんと16人もの「おばさん」がいる。全員が親戚というわけではない。同じコミュニティに暮らし、子供を含むコミュニティのメンバーをお互いにケアする女性たちを、そう呼ぶのだ。 英語で「おば(伯母/叔母)」はaunt(アント)だが、本作で使われているのはaunty(アンティー)。親しみを込めて呼ぶ際に使われ、日本と同じく「近所のおばちゃん」にも使われる。 少年は家庭でも、学校でも、それ以外の場でもさまざまなアンティーに囲まれ、成長していく。子供だけでなく、少年の両親もアンティーたちに支えられ、安心して家庭を営んでいる。 こうしたコミュニティの親密さ、温かさ、地域社会の機能の描写に加え、本作には別のテーマもある。舞台となっているのがネイティブ・アメリカンのコミュニティであり、先住民が伝統的な文化とアメリカの文化をどのように融合させて暮らしているかが自然とわかる構成になっている。 アビーおばさんは少年の母親の家庭菜園を手伝いに来てくれる。まだ独身で若いけれど、少年はアンティー・アビーと呼んでいる。カイリーおばさんは手作りのモカシン・シューズをくれた。少年はそれを履いて落ち葉の中を転げ回って遊んだ。パトリシアおばさんは新年のパウワウで先住民の伝統的なデザインのイヤリングやブレスレットを売り、少年にビーズ細工を教えてくれた。パウワウは先住民が集い、ダンスを踊る祝祭だ。エマおばさんは民族衣装をまとって学校を訪れ、子供たちに先住民の歴史や文化について教えてくれた。アメリカ黒人であるサウンドラおばさんは少年の家を訪れ、黒人と先住民の歴史を語ってくれた。2つのグループは交差した過去を持ち、少年は史実に含まれた悲しみ、癒し、そして希望を学んだ。「the rez」の中を走るスクールバスはベティおばさんが運転している。rezは先住民の居留地(reservation)の通称だ。感謝祭の日、ジュリーおばさんは七面鳥の着ぐるみを着て、子供たちのためにミニ・マラソン大会を開催した。「欧州からの入植者が北米にやってきて飢えた際に先住民が助けた」という逸話は祝わず、けれど子供たちは秋の風物詩としての七面鳥を楽しんだ。 少年は家庭菜園を手伝ってくれたアビーおばさんの結婚式に参列する。キリスト教徒のアビーは夫となる人と共に先住民の伝統的な衣装をまとい、教会で式を挙げた。少年の一家もクリスチャン。暖炉の前に飾られたクリスマスツリーには天使の代わりに先住民のオーナメントが飾られている。 春になり、少年の一家に女の赤ちゃんが生まれた。名前は「Hesci(ヒースチェイ)」。先住民族モスコーギ(クリーク)の言葉で「ハロー」を意味する。両親に挟まれて妹を抱っこする少年を、何人ものアンティーたちがニコニコと微笑みながら見つめているのだった。(どうもと・かおる=NY在住ライター)