2026/05/01号 7面

American Picture Book Review 108(堂本かおる)

American picture book review 108 堂本かおる ネコ・タコス 本作は英語話者の幼児にスペイン語を紹介するための絵本。『ザ・ガト・タコ』(The Gato Taco)と、韻を踏んだタイトルを読むだけで「gato」ネコ、「taco」タコスと、スペイン語の単語を2つ知ることになる。(注:カタカナ語として浸透しているタコスは実は複数形であり、単数形はタコ。したがって日本語でも「ネコ・タコ」と韻を踏める)。もっとも、タコはアメリカの日常生活にすっかり定着した食べ物で、子供たちはそれがメキシコ由来のスペイン語であることすら認識していないと思える。 どのページにも、飼い主の少年の目を盗んでタコを食べるために悪戦苦闘するネコの絵が描かれている。ネコの行動を説明する短い文章は英語だが、スペイン語の単語が一つか二つ、混ぜてある。例えば「One sunny afternoon, the gato was "muy ocupado."」(ある晴れた午後、ネコはとても忙しい。)とあり、けれどネコは昼寝をしている。絵と文の乖離を指摘して子供を笑わせることもできる。 以後、タコの良い匂いで目を覚ましたネコがタコを盗み食いし、具のマメでお腹がパンパンに張ってオナラが出る、玉ねぎ臭いゲップが出る、スパイシーなソースを舐めて辛さに閉口する姿がユーモラスに描かれ、各ページにmuchacho(男の子)、plato(お皿)、ai, ai, ai(おや、まぁ)などスペイン語が散りばめられている。途中から盗み食いに加わり、ネコと共に大変な目に遭う犬の名前はPaco(パコ)と、これも「gato」「taco」との韻になっている。全編で計21のスペイン語の単語やフレーズが使われ、巻末にまとめて意味が書かれている。 なお、日本人も含めて英語学習者には冠詞(a/the)、単数形/複数形のよい勉強になり得る。gatoは一般名詞の「ネコ」であり、主人公であるネコの名前ではない。けれど主人公のネコを指していることから「a gato」ではなく、「the gato」となっている。ネコが最初に匂いを嗅いだのは「a taco」だが、次のページでは同じタコを指して「the taco」となっている。やがて少年が取り上げ、他のタコと共に一枚のお皿に盛ると「tacos」となる。また、一般論としての「ネコはタコを食べちゃだめ」は「Tacos are not for gatos.」と、どちらも複数形になっている。 いずれにせよ、シンプルな絵と文章を際立たせるため、室内の背景はほとんど描き込まれておらず、各ページがそれぞれ柔らかな色合いの黄色、オレンジ、ラベンダー、ピンク、グリーンなど単色で塗られている。それが黒いgato、茶色いPaco の愉快な姿を引き立てており、見て楽しく、読んで楽しいスペイン語入門絵本となっている。(どうもと・かおる=NY在住ライター)