日常の向こう側 ぼくの内側 743
横尾忠則
2026.6.15 テレビはワールドカップ一色。自分は時代の外側にいる人間らしくサッカーには熱狂できない。世間が熱くなるとなぜか冷える。
相変らず海外からの問い合わせが多いが、何故かメンドー臭く思うのは、距離のせいかも知れない。
2026.6.16 〈この間からどうも怪しい暗黒世界の人間が、たくみに接触してくる。その人間はこちらに利益を与える振りをして、その実、利益を得ようとしている。その手下の人間が近々結婚をするらしく、結婚資金をこちらに出させようとしている〉、そんな夢を見るが、夢の中で「この間から」と言うのは夢時間なのか、現実時間なのか?
島地勝彦くんに柴田錬三郎の小説『うろつき夜太』の挿絵をプレゼントしたが、「50年間たっぷり鑑賞させていただきました。お返しいたします。美術館に寄贈してください」と絵を返却してくれる。
2026.6.17 〈小学校の校舎を野火のように燃やすパフォーマンスのようなことをしている〉夢を見る。
いったん治ったかと思った足の親指が再び痛み出した。
実業之日本社で出版した『飽きる美学』のプロモーションの取材に。2時間ばかりしゃべらされたせいか、終っても立てない。心配した徳永が救急車を呼ぶ。救急隊3人で抱きかかえられてやっとタンカから車内へ。久し振りに乗る救急車は相変らず、ベッドが揺れて背中が痛む。サイレンの音もうるさい。馴染の玉川病院の救急センターへ。早速、心電図を取って、採血と点滴。脱水症状と起立性低血圧で軽い脳の貧血と診察されたらしい。体温も血圧も正常。どこが病人なんだろうとフト思う。3時間後に解放されて帰宅。昼食は鯛焼き2匹分の皮を食べただけだったので空腹で倒れたのでは、と自己診断する。結局大げさな芸術的パフォーマンスを演じただけのことだったのかも知れない。
2026.6.18 尾上右近さんの第十回「研の會」のポスターを作る。スカッとしたやゝモダニズムなデザインに仕上る。画家とデザイナーの二刀流は2人の別人格。
2026.6.19 〈成城の町が活気づいている。増田屋で脚本家とプロデューサー同伴の山田洋次さんに久し振りに会う。帰り際、「また会いませんか」と同時に同じセリフを吐く〉という夢を見る。早速、山田さんの秘書に徳永が、「横尾が山田さんの夢を見て、夢の中で会う約束をしたので山田さんに、そう伝えて下さい」と電話を入れる。
妻の定期診断に付添いで玉川病院へ。いつもラッシュの時間なのに院内はガラガラ。妻の食欲がなく、やせてきたので心配だったが、レントゲン、尿検査、採血の結果はむしろ良好。先ずは安心する。
2026.6.20 〈書評本が届いて開いてみると、女性器の位置がずれた所についている写真が掲載されている。こんな本の書評はしたくないと思う〉夢を見る。
近所に住む北沢さんが、山形さくらんぼとチャイのペットボトル持参でアトリエに遊びに来る。母親の介護のために明日からまた長野の実家に帰るそうだ。
小学校の音楽室が火事。そういうと、この間小学校の火事の夢を見た。
2026.6.21 妻のお気に入りの野良のオオグロが玄関のエサを食べに。「オオグロがこない」といつもやかましく言うくせに、来ると意外と知らん顔をしている。目に見えるものより目に見えないものに関心があるらしい。
ワールドカップ日本vsチュニジア戦。夕方ビデオで観る。街は人通りが少ないが、興味のない人達も結構いるらしくウロウロしている。
終日、かなり体調悪い状態がここ1、2週間続いているけれど、快復するのかしないのか、不安はつきまとう。(よこお・ただのり=美術家)
