American picture book review 104
2026年1月1日、ニューヨークの新市長ゾーラン・マムダニの就任式が行われた。本作は新市長のフレンドリーな人柄と、ニューヨークというユニークな都市の関係を描いた絵本だ。
アメリカではワンシントンやリンカーンなど米国史上の偉人である大統領の伝記絵本だけでなく、新しい大統領が選ばれるたびにその絵本が出版される。バラク・オバマ大統領の絵本は伝記だけでなく何種類も出された。カマラ・ハリスも副大統領時代より、やはり数種類が出された。一国のリーダーを子供たちにも身近な存在として伝えるためだ。さらに言えば、人種民族マイノリティの子供にも、女の子にも「自分も何でもなりたいものになれる!」とメッセージを送るためでもあった。そんなアメリカにおいても、市長の絵本が出されたのは初めてではないだろうか。
昨年の市長選は揉めに揉めた。マムダニは民主党員ではあるが民主社会主義を唱え、公約は託児所と市バスの無償化、特定の賃貸家賃の凍結だった。これに対し、資本主義の崩壊を招くとして共和党および資本家が大きく反発し、民主党の政治家たちも戸惑った。何よりマムダニはイスラム教徒であり、かつアフリカのウガンダでインド系の両親から生まれ、子供の時期にアメリカにやってきた移民でもある。イスラエル/ガザの問題があり、かつトランプ政権による移民排斥が進む中、マムダニの市長当選にはいくつもの障壁があった。しかしマムダニは多くの市民、わけても若者の大きな支持を得て当選した。
本作はマムダニの政策ではなく、自ら街を歩き、人々と接し、ニューヨークという都市を愛してやまないマムダニの人となりを表している。絵本の中のマムダニはトレードマークとなった満面の笑顔、濃色のスーツにシルバーグレーのスニーカーでニューヨーク市を構成する5区=マンハッタン、クイーンズ、ブルックリン、ブロンクス、スタテン島を歩く。通りにはいろんな人たちがいる。マムダニはハラルのフードトラックでビリヤニを買い、フェリーに乗って自由の女神を眺め、シティフィールドでメッツを応援し、コニーアイランド恒例の寒中水泳にも挑む。あるページでは、マムダニと妻のラマが地下鉄に乗っている。マムダニは白い民族衣装、アーティストのラマはシンプルな白いドレスに黒のロングブーツを履いている。2人は昨年初頭に結婚しており、イラストは当人たちがSNSで公表した、市役所での結婚式に向かう際の写真どおりだ。同じ車両の中に踊るヒップホップ・ダンサーと、それをニコニコ眺める乗客たちも描かれている。近年、地下鉄内でのパフォーマンスへの処罰が厳格化されたことへの異議かもしれない。
さて、明けない混沌の中にあるアメリカではあるが、2026年、ニューヨークの子供たちは新しいリーダーをどう迎え入れるのだろうか。(どうもと・かおる=NY在住ライター)
