2026/07/17号 8面

日常の向こう側 ぼくの内側 746(横尾忠則)(8)

日常の向こう側 ぼくの内側 746 横尾忠則 2026.7.6 〈養老孟司さんがガンだというのに歩くのが物凄く速く、ついていけない。ホテルニューオータニのフロントに食堂の予約をしていたのに食堂に通っていない〉、がっかりする夢。  〈駅のトイレに入るが水道の水が出ない。手にサイダーを2本持ったままホームへ。博多発大阪行の列車が入ってくるが、どの列車に乗ればいいのかわからない〉夢を見る。  成城駅前の中華料理桂花で隣町の建畠晢さんと食事をする。食欲がないのでコースを注文して、奮闘しようと思う。それが意外やほぼ完食で、食欲が治った?みたい。店で女優の戸田菜穂さんに会うが、彼女とは会う度に、「どなた?」と言ってしまうので、今日は向こうから先に「戸田です」と言われてしまった。画家のくせにぼくは顔音痴です。 2026.7.7 東京国立博物館の松嶋副館長、コレクションの件で来訪。  目下制作中のドラクロワVSデュシャンは遺作シリーズと名乗っているが、ニューヨークでの来年の個展作品も遺作のつもり。まあ、これから描く作品は全部遺作。  糸井重里さん来訪。近未来の計画を話すと、糸井さんも全く同じ考えだという。じゃ一緒にやろうということになる。 2026.7.8 『文學界』の新編集長で『原郷の森』を担当してくれた清水陽介さんが来訪。『未完で生まれて未完で生きて、未完で死ぬ』の前編の0歳から21歳までの自伝を『文學界』で連載が決まる。10代の感性で書けるといいが?  「ヤコブと天使の闘い」の2作目は1作目よりうんといい絵になりそう。 2026.7.9 朝日新聞の大西さん来訪。美輪明宏さんの追悼文が大評判とか。追悼文は美輪さんがぼくにという遺言だったらしい。信用してくれていたんだ。今日の大西さんは永井一正さんの追悼記事のための取材に。  実業之日本社の村嶋くん来訪。茂木健一郎さんとの対談集の編集を目下作業中で来年の出版予定らしい。 2026.7.10 〈西脇の自宅近くで白いシャツ、白いパンツにエビ茶色のベストを着た一見俳優らしい人が自転車で走っているが、ぼくと全く同じ格好をしている〉という夢を見る。  〈一晩中、幼年期の自伝を書き始める〉夢を見るが、現実のシミュレーションに疲れた。  朝、玄関に出たら隣家の家が壊されて、空地になっていて驚く。  イッセイミヤケの来春夏のパリコレのインビテーションカードの打合せに、デザイナーの近藤悟史さん、シューさん、広野麻理さん。次回の洋服が空気で膨張したデザインを計画しているというので、カードを送る封書の中に風船ガムをおまけに入れたらと提案する。 2026.7.11 〈西脇の寿座で映画を観て、表に出た所で料金を払うのだがポケットに7円しかないと言うと、もともとこの映画の料金は7円なので丁度いい〉と言われる夢を見る。  真夏日和になり、体調も少しずつ回復の兆が見えるので、来週当り、川口市の氷川神社からポスターを頼まれているので出掛けてみようかな。 2026.7.12 よく眠れていたのに最近時々不眠症気味になる。  今でこそ絵を描いているけれど、死んだら絶対絵なんか描きたくない。そのために、今描きたい絵を片端から描いているのだ。死んだ後の評価なんて他人事である。死と同時に現世は無になればいい。  何が一番気持がいいかというとアトリエ内に流れる冷んやりした空気だ。(よこお・ただのり=美術家)