2026年 夏の文庫特集号
<「世界の見え方」が深くなる>
池上彰さん増田ユリヤさんが文庫を買う!
毎年恒例「文庫特集号」をお届けします。出版社のご協力のもと、2面から6面までは「読者へのメッセージ/文庫読みどころ紹介」「新刊・近刊ピックアップ」「売れ筋文庫TOP10」で、注目の各社の文庫本をご紹介。7面では「文庫本アンケート」として、8名の方に〈思い入れのある1冊〉についてご執筆いただきました。
今年の1・6面「文庫を買う!」には、ジャーナリストの池上彰さんと増田ユリヤさんがご登場。また9・10面では、末國善己さんに文庫時代小説9選、杉江松恋さんに文庫ミステリ小説9選をご寄稿いただきました。文庫を楽しむ極上のひとときを、どうぞ。(編集部)
梅雨が終わり急激な暑さが訪れた七月某日、東京堂書店 神田神保町店で、池上彰さんと増田ユリヤさんに、文庫を選書いただいた。テレビ番組ではニュースや社会情勢を掘り下げて解説、「池上彰と増田ユリヤのYouTube学園」では教育系YouTuberとしても活躍する。お二人が選んだ文庫とは――。
●ルイ・ハーツ『アメリカにおけるリベラルな伝統』(西崎文子訳、1650円・岩波文庫)
増田 〈アメリカは封建制度や貴族階級のないリベラルな社会として出発した〉と表紙の内容紹介にあります。アメリカの建国期からの歴史を辿ることで現在が見えてくるのではないかと思い、この本を選びました。アメリカに新天地を目指して渡って来た人々は、封建的抑圧や宗教的抑圧から逃れてきたのだ、ということが本書の前提にあり、批判も含みながら、古典的名著として読み継がれてきた一冊だそうです。ハーツが唯一例外とみなす南北戦争期の南部の思想でさえ、彼にかかればリベラルな伝統を証明するものになっている、と解説には書かれています。
平等の概念も、日本で一般的に言われていることと、アメリカの歴史におけるものは違いますよね。「人間は生まれながらに平等」だと言われますが、かつてのアメリカでは平等の対象は白人だけでした。
池上 そこには黒人も先住民も入っていませんでしたね。
増田 今「YouTube学園」で、代々の大統領を追っていますが、それぞれの大統領の時代ごとに、民衆に受け入れられた価値観も違うのには驚きますよね。歴史を掘り下げて理解できると、差別がなくならないアメリカ社会や、白人の主張の理屈を考えるための素地ができるのではないかと思っています。その知識の一つとして、この本を読んでみたいと思い選びました。
池上 アメリカ建国二五〇年を目して、新訳版が出されたわけですね。この機会にアメリカの建国から学び直すというのはいいですね。
●千足伸行監修『なるほどフェルメール』(1100円・河出文庫)
池上 私が最初に選んだのはこの本です。フェルメール《真珠の耳飾りの少女》が十四年ぶりに日本にやってきますね。実は、実物を見たことないんです。
増田 私は見たことあります(笑)。
池上 オランダのアムステルダム国立美術館に行ったら、《真珠の少女》の小さなポスターが貼られていて「私はここにいません」って。所蔵はハーグの美術館だとそのとき知りました。
増田 実物は思っていたより小さかったですよ。
池上 本書の口絵には、フェルメールの残した全三五作品が掲載されています。暗さと光が印象的ですよね。まずは十二の名画をキーワードで読みとく一章から、次に画面に隠された技法やモチーフの解説、謎の多い画家本人について、最後はフェルメール作品にまつわる事件。絵画に触れて、ほっとしながら知識も得られる本だと思います。ページを繰ると、旅に出て美術館に立ち寄りたくなりますね。
●獅子文六『コーヒーと恋愛』(990円・ちくま文庫)
増田 『コーヒーでめぐる世界史』(ポプラ新書)を書いたばかりなので、コーヒーに目がいきました。裏表紙の紹介を見ると、コーヒーを入れさせればピカイチの女性の話だそうです。パートナーが突然、若い女優のもとに走ってしまい、悲嘆に暮れつつコーヒー愛好家の友人に相談……そこから始まるドタバタ劇。昭和の名作が文庫として復刊され、現在は二十四刷。この物語でコーヒーがどんなふうに扱われているのか、味わいたいです。
●伊与原新『宙わたる教室』(825円・文春文庫)
池上 著者は東大大学院の理学系研究科で地球惑星科学を専攻。もとは理系の研究者だったけれど、小説家として人気が出たんですね。寺田寅彦や中谷宇吉郎をはじめ、理系の科学者には魅力的な文章を書く人が結構います。この本は、知識に裏打ちされた〈青春科学小説〉、NHKドラマにもなっているそうです。伊与原さんの他の作品は読んだことがあるのですが、この本はまだだったので選んでみました。
増田 池上さんは、子どもの頃から小説、お好きなんですよね。
池上 大好きです。ただ最近は小説より、仕事に関わるノンフィクションを手にすることが多くて。こういうときこそ、小説を選びたいという気持ちもありました。
●千野栄一『プラハの古本屋』(1155円・中公文庫)
増田 チェコ・プラハには取材で行ったことがあり、タイトルに情景が浮かんできて、どんな話なのかなと興味を惹かれました。
池上 この本、ぼくも持ってますよ。静かなロングセラー作品です。
増田 社会主義国では良い本は店頭には出ていない。思想や言論に統制があるから、バックヤードにしまってある本を見せてもらえるかどうか、店主の方といかに親しくなれるかが、いい本を手に入れる鍵なんですね。
池上 レストランの裏メニューみたい(笑)。 増田 著者は言語学者ですが、直接言語学と関係のないエッセイが一冊にまとまったのが本書だということです。プラハにいた十年間、古書を探さない週はなかった著者と本の出逢い。
言論統制といえば、アメリカではブックバンという検閲運動がありますね。
池上 保守派の政治団体や、トランプの支持者たちが、LGBTQ+の人たちの権利を認めたり、人種差別問題を扱ったりする本を、学校図書館や公共図書館に置かないようにさせる運動ですね。特に田舎の保守的な地域ではそうした動きが見られます。
増田 黒人の女性が宇宙開発で活躍した、というような本は禁書にする。逆にそうしたリベラルな本を集めて、学校や公共図書館におく運動をしている人たちもいます。社会主義国の古本屋についての本に、そのような世界の現状を思いつつ、選びました。
●今野敏『赤い密約』(726円・集英社文庫)
池上 社会主義の話になりましたが、この本は一九九三年十月三日、ロシアで実際に起ったクーデター未遂を題材にしたアクションノワールです。モスクワのテレビ局を訪れていた主人公が、ロシアのジャーナリストから命懸けで託された一本のビデオテープが、マフィア、ヤクザ、政治家を巻き込む巨大抗争勃発の引き金になるという。主人公が空手家なのもポイントなんですね。
モスクワクーデター未遂はニュースとして知っていますが、その裏で、もしかしたらこんなことがあったかもしれない、と思わせられる。あくまでフィクションですが、過去の出来事を蘇らせ考えるためのきっかけになりますよね。金平茂紀さんの解説によれば、今野さんご本人がロシアで空手を教えてきた経験があるとのことなので、ディテールのリアルさに期待ができます。今野敏さんの警察小説はけっこう読んでいるんですが、こういう推理小説も書くのだなと興味をもちました。
●カルロ・コッローディ『ピノッキオの冒険』(大岡玲訳、924円・光文社古典新訳文庫)
増田 噓をつくと鼻が伸びてしまうとか、木の人形が最後に本当の子どもになるという断片は記憶に残っているんですが、これは〈ほんとうのピノッキオ〉だと書かれています。そう言われるとほんとうの物語は知らないかもしれない。紹介文には〈19世紀後半イタリア国家統一の時代、子どもに対する切なる願いを込めて書かれた児童文学〉とあります。その時代には、どのような子どもへの願いがあったのか、気になって選んでみました。
池上 ピノッキオというと、トランプの鼻をピューッと伸ばした風刺絵だとか、かつてトランプがあまりに噓ばかり言うので、どこかの新聞のファクトチェックで、「1ピノキオ」「2ピノキオ」「3ピノキオ」と、噓の単位として使っていたことなどを思い出します。
増田 ピノッキオというと、そのイメージですよね。子どもの頃触れたのは、原作を単純化し、教訓を込めた絵本だったと思いますが、原作のもつ残酷さや陰惨さ、貧困、社会の不平等、不条理なども楽しみに読みたいと思っています。
●米原万里『心臓に毛が生えている理由』 (704円・角川文庫)
池上 米原万里さんはもともと好きな作家ですが、この本は読んでいませんでした。父の米原昶は日本共産党の幹部で、国際的な共産党の情報誌の編集委員として、一九六〇年頃プラハに家族を連れて赴任しています。それで娘の万里さんは、プラハ・ソビエト学校という、ソビエト連邦大使館付属学校に通って、ロシア語教育を受けるんです。その経験から彼女はロシア語が達者になって、ロシア語通訳者になるわけですね。表題作は、同時通訳の究極の心得を披露する内容だということです。洒脱でシニカルなウイットに富んだエッセイを書くのが上手な方で、間違いなく読んで楽しい一冊だと思います。
増田 私も『噓つきアーニャの真っ赤な真実』、大好きです。
●小川糸『食堂かたつむり』(792円・ポプラ文庫)
増田 『ライオンのおやつ』と迷ったのですが、ホスピスが舞台なので今の自分には重いかな……と、〈人生に迷った時に読みたい〉と謳い文句のあったこちらにしました。主人公は一気に様々なものを失ってしまうんです。ある日家に帰ると、部屋の中が空っぽになっている。電化製品から玄関マット、台所道具まで、同棲していた恋人がすべてを持ち去ってしまう。あまりの衝撃に声も失い、山あいのふるさとに戻って小さな食堂を始める――迎えるのは一日一組のみ、決まったメニューはない。
私は〈食〉に関心があって、まだ文庫にはなっていませんが、阿部暁子さんの『カフネ』も好きでした。
●共同通信社社会部編『沈黙のファイル 「瀬島龍三」とは何だったのか』(1100円・朝日文庫)
池上 この本は最初の文庫化は新潮文庫で、復刊が朝日文庫から刊行されています。共同通信社が長らく瀬島龍三を追いかけて、まとめた一冊です。瀬島龍三は謎を抱えた男なんですよ。太平洋戦争の陸軍参謀で、ソ連の捕虜になりシベリアに抑留されています。日本軍の参謀であったにも係わらず、シベリアの収容所から生きて日本に帰ってきて、戦後は政財界の様々なところで暗躍し、伊藤忠商事の会長に登り詰め、〈昭和の参謀〉と呼ばれるわけです。しかしそれぞれの時代に何かしら不透明な点が残る。ソ連に抑留されていた時代に何があったのか、絶対に語りませんでしたが、日本の国益を損なうような裏切りを行うことで生き延びることができたのではないか、という疑惑があるんです。
私がインタビューしたのは、臨時教育審議会の委員に彼が選ばれたときです。当時NHKで委員全員に総当たりでインタビューをすることになり、たまたま瀬島に当たったのですが、いろいろ話を聞こうとするのだけど、なんかこう、木で鼻を括るような対応で太刀打ちできませんでした。その彼の疑惑について共同通信が調べ上げたノンフィクション、改めて読みたいと思っています。
●エリカ・ルース・ノイバウアー『イスタンブールの殺人』(山田順子訳、創元推理文庫・1540円)
増田 日頃、推理小説はあまり読まないのですが、コーヒーの本の取材でイスタンブールにも行ったので、小説の舞台に惹かれて、手に取りました。時代は一九二六年、第一次世界大戦後。アガサ賞最優秀デビュー長編賞受賞作です。
イスタンブールの取材のときに、アガサ・クリスティの『オリエント急行殺人事件』に登場するシルケジ駅を通りました。取材でしたので観光する余裕はなかったのですが、イスタンブールには歴史的な場所が残っているのだと印象に残りました。クリミア戦争の折にナイチンゲールが働いていた病院も残っていて、見学ができるんです。知識として知っていただけの歴史的な場所が、直接自分の目の前に迫ってきた、という体験をして、その舞台が小説になっているなら読んでみたいと思った一冊です。
池上 パリとイスタンブールを繫ぐオリエント急行。土地の空気を知ると、小説の味わいも変わりそうですね。
●佐藤優『読む力を鍛える』 (814円・PHP文庫)
池上 佐藤優の本はだいたい持っているのですが、これは読んでいなかった。〈教養はこうやって培う〉、ぜひ学びたいですね。
増田 しょっちゅう一緒にお話ししてますからもう鍛えられているのではないですか。
池上 彼の読書量は本当にすごいですからね。原稿を書く速さもすごい。〈哲学書をどう読み進めるか〉〈社会生活の悩みにヘーゲルを生かす〉なんて書いてありますよ。
増田 教養の失われた時代になってきていますからね。池上さんは新聞を十一紙読んでいますが。
池上 私の情報のソースはほぼ新聞です。
増田 でも最近は、新聞では情報が遅いという問題もありますね。
池上 はい、その通りです。
増田 YouTubeの収録の前日、あるいは当日の新聞でも、世の中の動きが早過ぎて、情報が更新されてしまっていることがよくあります。
池上 前日、新聞のウェブ版で見た記事を、翌日紙で見て、デジャブですよ。でも佐藤優も書いていますが、だからこそ今、これまで軽視していた旧来型の教養を取り戻さなければならないのではないかと。ネットの情報のスピードを得ながらも、自覚的に「読む力」、教養を培う努力が必要だ、というわけですね。
●津村記久子『やりなおし世界文学』(935円・新潮文庫)
増田 「読む力」ときたので、この本はいかがでしょう。全部で九十二作、知っている作品も知らないものもありますね。一冊につき四ページの紹介が、津村さんの言葉で書かれているから、知っている作品はどんなふうに紹介されているのか気になりますし、知らない作品は紹介に興味をそそられたら、読んでみようと思います。
池上 これは刺激されて読みたくなるね。
●池澤夏樹『ぼくたちが聖書について知りたかったこと』(770円・小学館文庫)
池上 キリスト教の泰斗である秋吉輝雄さんと池澤さんが語る、対談形式の本です。「聖書とは何か?」「ユダヤ人とは何者か?」「聖書と現代社会」という三部からなります。小見出しには〈ヘブライ語には過去形がない〉とか〈誤読から生まれた「エホバ」〉、〈臓器移植とユダヤ教〉などとありますよ。どんなことが語られているのでしょうね。
増田 この本は私も持っています。
池上 世界を知る上で宗教は重要な要素ですし、聖書についていろいろな角度から知っておきたいという気持ちがあり選びました。
あとがきによれば秋吉さんは、池澤さんの父である福永武彦さんの母方の従兄だそうです。情報量は多いですが、対談形式なので読みやい一冊なのではないでしょうか。
●藤野千夜『また団地のふたり』(737円・双葉文庫)
増田 気になっていた話です。小泉今日子さんと小林聡美さんが主演で、NHKでドラマ化もされ、この七月からは地上波でも放映されるようです。本書は『団地のふたり』の続編。五〇代独身の幼なじみ二人が実家の団地に出戻って交流する、ささやかなしあわせな日々が紡がれていくという物語。
高齢化社会で、孤独死などが社会問題として取り上げられる時代ですし、人と繫がることや、ご近所と付き合うということに、臆病にならざるを得ない時代でもあると思います。その中で、この小説ではどのように団地で暮らす女性たちが描かれているのか、読んでみたいと思いました。
●池井戸潤『新装版 銀行総務特命』(902円・講談社文庫)
池上 巨大な銀行には多くの不祥事があるわけですよ。その行内の不祥事をもみ消したり、解決したりする担当者を主人公に据えた話です。池井戸さんは、慶應義塾大学在学中に推理小説同好会に入っていて、卒業後は旧三菱銀行に入行した経歴があります。その経験を活かして、この本もそうですし、ドラマが社会現象にもなった『半沢直樹』などが書かれているんですよね。
『半沢直樹』に出てくる〈東京中央銀行〉で使われる用語は、全て三菱銀行で使われているものだという話です。
増田 銀行の内実を曝露していいんですか(笑)。
池上 あくまでフィクションですから。ただ『半澤直樹』について、日本長期信用銀行のOBが「銀行はあんなにひどいことをしないよね」と言ったら、三菱銀行のOBは「あの通りです」と言ったという話があります(笑)。
池井戸さんの書く銀行小説はリアルなので、いかに銀行には不祥事があり、それをどう処理しているのか、この小説から資本主義社会の一端が見えてくるかもしれません。
●キャット・タン『レンタル家族の消滅』(金井真弓訳、1936円・ハヤカワ文庫NⅤ)
増田 主人公は、依頼されればどんな役割もこなす、レンタルサービスに従事しています。あるシングルマザーからの依頼で、長距離トラックの運転手で週に一度だけ家に帰る設定で、女の子のお父さんを八年間演じ続けている。ところが――。
池上 面白い設定ですね。
増田 疑似家族、疑似恋人、現実にもそうしたサービスがありますよね。この小説によって炙り出される〈現代の孤独と不安〉とはどのようなかたちをしているのか。孤独や不安は、本当の家族や恋人どうしの間でも、感じている人はいると思います。その現代の問題について、考えるきっかけになるのではないかという思いもあり、選んだ一冊です。
●茂木誠『世界史講師が語る「保守」って何?』(1210円・祥伝社黄金文庫)
池上 保守、リベラル、右翼、左翼、最近はリベラル保守、というような言葉も出てきていますが、そもそも「保守」とは何なのか、改めて学び直そうと思い買ってみました。
ここで書かれているのは、世界史的に見た保守です。保守とリベラルの起源から繙かれ、フランス革命ではどうだったのか、アメリカの保守とリベラルはどうなのか、そして日本近代の保守とは何か、敗戦後は首相ごとに時代を区切って検討していきます。
増田 何か物を言うと、保守だリベラルだ、右だ左だと、勝手なレッテルを貼られがちですが、どこが境界線なのか、実際にはわからないことが多いですよね。
池上 姿勢と思想がごちゃごちゃになっていることもありますよね。思想が合わない人とも話ができなければ、分断は深まっていくばかりですから、まずは「保守」とは何なのか、歴史的な視点から読んでみたいと思います。
*
――お二人とも本を選ぶのが早かったのですが、いつも短時間で大量に買われるのでしょうか。
池上 大量に買います。
増田 買っちゃいますね。
――書店にはよく行かれますか。
池上 週に三回から四回行きます。
増田 私は本屋さんの前を通ると、素通りしない、という感じです。
池上 よく行くのは八重洲ブックセンターと池袋の三省堂、東京駅丸の内北口の丸善。神保町に来るときには、今日文庫を選んだ東京堂書店にも寄ります。
――文庫を選んでみていかがでしたか。
増田 楽しかったです。仕事柄、新書を読むことが多いのですが、今回は文庫限定ということで、普段見逃していた、いい本に出逢えた気がします。いつもの自分とは違うものにも手を伸ばしてみよう、という気持ちもあったかな。
池上 好きに本を買っていいなんて、楽しすぎる企画です。
学生時代には、安価な文庫に本当に助けてもらいました。神保町の古本屋街にもよく来ました。古書でいい本が安く手に入ればありがたいですから。古書店街の裏に「人生劇場」というパチンコ屋が昔あったのですが、さすがは神保町で、景品に本が並んでいるんです。新潮社の『マルクス・エンゲルス選集』を、よし!パチンコで取ってやろう、と。結局、直接買ったほうがよかった、ということになりましたが(笑)。
――普段はどんな読書をされていますか。
増田 最近は必要に迫られて読むことが多く、小説を楽しむような読書の時間はあまり取れていません。仕事で必要なものを読んだり、頭を休めたいときは編み物の本を読んだり。
池上 仕事に関係する以外の本を読む時間がなかなか取れないので、あえて自分に負荷をかけるために、東京科学大学の卒業生たちと毎月読書会をしています。最近だと『ふたりの読書会無期受刑者との本をめぐる往復書簡』『最適化幻想 効率が人を幸せにしない理由』などを読みました。
増田 本はある程度負荷をかけないと読めないものなのかもしれませんね。(おわり)
