2026/01/16号 8面

日常の向こう側 ぼくの内側 723(横尾忠則)

日常の向こう側 ぼくの内側 723 横尾忠則 2026.1.5 本年病院初詣。老齢になると病名のない病を患う。国立東京医療センターの鄭先生の初診断。この歳(90)では異例!と太鼓判押されるが、そーでもないから診てもらっているんですがね。院内レストランで釜揚げうどんらしくない釜揚げうどんを食べて、書店で大谷選手の写真集を買って、コンビニで自然食おやつを購入。ティーサロンでソフトクリームとエスプレッソ。角田先生と近所のそば屋に行く予定が予定変更。  平野啓一郎くんがニューヨークからタイムズスクエアでの元旦カウントダウンのセレモニーの報告のメール。今月再び帰国で、再会予定。  おでん退院。今日から再びおでん中心の生活が始まるが戦々恐々。 2026.1.6 おでんと一晩中枕を揃えて眠る。  絵具も乾き、最後の一筆、画竜点睛で完成。  建畠晢さんとアートフェア・アジア福岡での公開対談は体調事情にてアトリエで対談。難聴激しく聞き取れず、勝手にしゃべる。嚙み合わないズレズレ対談はそれはそれで面白いのでは。  イタリア、フィレンツェでカプセル個展の依頼。ファッション作品とデザインのコラボ展の依頼。他にも海外展のオファーが2、3本あるが、今年は国内展は0。 2026.1.7 玉川病院の妻の定期診断に同席。病院嫌いの妻と病院好きの夫で丁度いいんじゃないですかと中嶋名誉院長さんの弁。  午後遅く、朝日新聞の書評編集長中村さんと編集者星野さんと今期で編集委員退会の有田さん(編集員)来訪。話の行きつくところはやっぱりAI。中国は80%。アメリカ60%、日本20%がAI使用人口。何を意味しているのか? 2026.1.8 〈陶芸を始める。初心者の作品は全て芸術になる。池田満寿夫はここでストップするので全て芸術作品として主張した。偶然の芸術を超えて、その先へと思うが、やっぱり芸術で終ってしまう〉という夢を見る。  深夜、おでんがベッド内で嘔吐。布団をはがしたり、何やらでヘトヘトになるが、おでんは食事を要求するので、そのサポート仕事が結構大変な作業である。おでんもこちらも老齢。老齢同士の共生共存は実につらいものがある。  トゥーヴァージンズの浅見さん来訪。超大型ポスター集、定価10万円也が、海外も含めて完売。気を良くしたのか、海外版Y字路集の可能性ありやなきやの打合せ。国内ではY字路論を集めたムックの企画『Y字路・大集合』に取りかかる。  日が一日一日目立って長くなってきた。太陽光線のエネルギーが創造に関与し始めると作品も増え始める。  森美術館名誉理事長森佳子さん(85)死去。 2026.1.9 おでん再び脱水症状で入院。もう長くなさそう。  実業之日本社がM氏との対談集を進行中との報告。  丹羽宇一郎さん死去。対談をしたことがある。  中村宏さん死去。60年代に時代を共有した現代美術家の最後の一人でもある。 2026.1.10 入院中のおでん、病院では嘔吐しなかったらしい。回復して再びわが家の生活に戻りたがっているのはおでん本人だろう。  ドラクロアの「自由の女神」シリーズの3作目は具象の抽象化。果たして何作シリーズになるかな? 2026.1.11 ペット医療最前線、遺伝子治療で難病が回復とのこと。おでんには間に合わないけど早く現実化して貰いたい。それにしてもおでんは末期的だ。あの子は雨の日に軽トラではねられて大ケガをしているので、自分でも健康体で無くなっていることを自覚していると思う。病院から出て、自宅でいつもの生活に戻りたいと念じているような気が伝わってくる。(よこお・ただのり=美術家)