著者から読者へ
辞書で身につく本当の英語力
石原健志
『辞書で身につく本当の英語力』は、辞書を「単なる意味調べの道具」ではなく、英語学習を支える相棒として捉え直すために書いた本です。まえがきでも述べたように、いまは検索や翻訳アプリ、生成AIによって、英語の意味をすばやく知ることができる時代です。けれども私は、それでもなお辞書には、英語学習にとって大切な価値があると考えています。
辞書を引くという行為は、ただ訳語を見つけることではないからです。複数の語義や例文の中から文脈に合う情報を選び取り、品詞や用法を確かめながら、目の前の英文の理解へとつなげていく。その過程そのものに、英語を学ぶ大きな意味があります。そうした少し手間のかかる過程を経て得た知識こそが、自分の中に残り、やがて使える英語力になっていきます。本書では、このように自ら情報を選び取り、考え、理解を深めていく力を「本当の英語力」として捉えています。
本書は三部構成です。第1部では、ネットやAIが身近になった時代に、なぜ辞書を使うのかを問い直します。第2部では、辞書の引き方、紙面の見方、用例や語法欄の読み方などを、英語学習の視点から具体的に解説しました。第3部では、授業や家庭学習の中で辞書をどう生かすかを、Q&A形式で提案しています。目次に並ぶ項目をご覧いただければ、この本が扱っている「辞書の使い方」が、単なる意味調べにとどまらないことを感じていただけると思います。紙辞書とデジタル辞書の使い分け、AIと辞書、さらにリーディング・リスニング・ライティング・スピーキングと言った英語のパフォーマンス力とのつながりまで、辞書を英語学習全体の中でどう生かすかという視点から、幅広いテーマを取り上げています。
私がこの本で繰り返し伝えたかったのは、「知っている語こそ、引いてみる」ということです。知らない単語を調べるのはもちろん大切ですが、ほんとうに面白いのは、むしろ「もう知っている」と思っていた語を引いた時かもしれません。
たとえばsayです。ふつうは「言う」と覚えている語ですが、辞書を開くと、『ベーシックジーニアス英和辞典 第3版』には「〈本・メール・案内板などに〉…と書いてある」とあります。これを読むと、sayという語の世界がぐっと広がります。
辞書は、意味だけを確かめる場所ではありません。語彙、文法、語法、発音、そして文化や歴史まで、ことばの奥行きを味わわせてくれる、豊かな読みものです。
本書は、英語の学習者にも指導者にも開かれた一冊をめざしました。辞書をこれから使い始める中高生にも、授業で辞書をどう扱うか考える先生方にも、それぞれの立場で読んでいただけるはずです。辞書を味方につけることで、英語との向き合い方はきっと変わります。本書が、その最初の一歩を後押しできれば幸いです。(いしはら・たけし=大阪星光学院中学校・高等学校教諭)
書籍
| 書籍名 | 辞書で身につく本当の英語力 |
| ISBN13 | 9784469246940 |
| ISBN10 | 4469246948 |
