2026/04/24号 7面

日常の向こう側 ぼくの内側(横尾忠則)735

日常の向こう側 ぼくの内側 735 横尾忠則 2026.4.13 〈三谷幸喜原作の映画監督を依頼される。体力が心配だが映画を撮ることで元気になるかもと引き受ける。主演は香取慎吾が当り役だが、むしろ高倉健さんの方が意外性があると思うが、健さんがいないことに気づく。だったら一層のこと原作者の三谷で行こう。撮影はドキュメント部分を森山大道で演出場面は篠山紀信でと思うが、篠山くんもいないんだ。そこへプロデューサーから電話が掛かる〉。電話を取ると徳永から病院へ行く時間が決まったという現実的な話になる。  腎臓の薬の副作用の下痢で散々な目にあう。そこでセカンドオピニオンの東京医療センターの鄭先生を訪ねる。薬の飲み合せが難しいと。下痢薬の酸化マグネシウムを処方してもらう。  院内レストランで肉たっぷりのカレーのサンプルにつられてそれを注文すると一切れの肉もなく、ルーのみのフェイクカレー。ひどい副作用!  アトリエで、遺作シリーズ19点目を。 2026.4.14 〈スピルバーグのスタジオで次回作の準備に立ち会っている。ポスターの依頼かな?「描いてもいいよ」と言うと、彼は「その言葉を待っていた」と言う。そこへ長男がマカオ経由でやって来た。彼は以前からスピルバーグの女性のプロデューサーと面識があるらしく、過去の映画ポスターを見せてくれるが、大衆迎合のポスターばかりで、物語の暗部も表現しなきゃダメと言うと、スピルバーグも大賛成と言う〉。2日続けて映画の夢を見る。  昨日の続きの絵を描く。  便秘が気になるので隣りの水野クリニックへ。腸の動きが悪く、便を押し出せないので腸を動かす液体と酸化マグネシウム薬を飲む。 2026.4.15 午前中、水野クリニックへ。昨夜、便通はあったものの不十分な結果。  西脇市長と岡之山美術館の新館長山﨑均さん来訪。  夜、朝日新聞社へ。書評委員会に出席するが、体調悪く、早退する。弁当は帰宅後食べる。 2026.4.16 相変らず便秘は治らず、地獄の手前の煉獄状態が続く。  夕方、水野クリニックへ。急遽浣腸をすることになった。自力ではなく、他力でなんとか。でも最後のエンマ大王は動かず。水野先生は先ずは成功と。目のきれいな若い看護婦さんは大興奮。煉獄から天国の中ほどまで上昇。シュールレアリスムを体感した感じ。生まれて初めてオムツ着用。老人になったというより赤ちゃんになった気分。 2026.4.17 便意はもよおすが、やはり動かず。  アトリエの大掃除をスタッフが。お腹も大掃除してもらいたい。  嫌いだったヨーグルトが便秘に効果ありと聞き急に好物になる。  徳永が水野先生に連絡を取ってくれる。結局わかったことは「考え過ぎないように」で納得。何かにつけて執着はダメ。 2026.4.18 便秘? 下痢?の不安は続く。かつて導引術を習った日本道観の早島妙聴道長に、導引による便秘対策を電話で教わるが、難聴で電話が聞き取りにくいのでメールで処方を送ってもらうことにした。  週刊新潮の種井さんはぼくの担当であると同時に便秘フレンドでもある。  夜初めて下痢でない便が少々。整腸剤の効果? 2026.4.19 〈布団の上に座ってこっちを見ているおでん。一瞬、手に感触あり〉。夢と現の境界。  下痢は治ったけれど便秘はまだ。  子供の頃から年中どこかが悪い。90歳まで持っているのは奇跡。肉体のないあっちの世界に憧れるのも無理ないでしょ。  遺作シリーズ20点目ほぼ完成。  夕方からピカビアでシャンプーとセット。  夜は妻の好物。彼女は1にうなぎ、2に寿司、3にラーメン。ぼくは1にステーキ、2にカレー、3に寿司とうなぎ、4がしゃぶしゃぶとおでん。(よこお・ただのり=美術家)