日常の向こう側 ぼくの内側
横尾忠則 No.679
2025.2.10 〈田島照久くんが尾崎豊を撮った写真が掲載されている雑誌を見ながら、彼の家に行こうと思って成城の駅に行くが、どこの駅だったかな、祖師谷だったかな、わからないので徳永に案内してもらおうと思う〉夢。
今日、アトリエから遠望する富士は真白で大きい存在感あり。
午前中、瀬戸内国際芸術祭をサポートするGUCCIが、豊島横尾館と銀座のGUCCIで個展をという企画の相談に芦澤さんら来訪。
玉川病院に定期診察に。熱い物を飲むと胸が痛いというと、食道炎の疑いが考えられるので近い内に胃カメラ検査を、と小野先生に勧められる。名誉院長の中嶋先生は、この歳では滅多にガンにならないけれど、長い間検査していないので、やるのもいいと。
2025.2.11 建国記念の日で休日。
増田屋へ。待っている間と食べ終った時間を利用して週刊新潮のエッセイ5枚脱稿。
セブンイレブンでアイスキャンデー15本買う。大量に買った自分に驚いているのに、レジの女性は全く驚かない。面白くない。
2025.2.12 〈朝日新聞の書評編集長に、横尾さんは本の一部を取り上げて書くのはなぜ?と聞かれたので、そこだけがビカッと光って見えるので、そこだけを書いた〉という夢を見る。
瀬戸の中外陶園から川上さんが次回作のモーツァルトと弥勒菩薩の作品を作ることになったので、その手法の説明に。
福岡伸一さんが「火の鳥」展を監修していて、対談に来訪。生物学者と画家の対談はさほど違和感なし。
高校時代の級友だった定本一朗くんが先月亡くなったと長女より手紙。同級生の死は郷里の町が少しずつ消えていく感じだ。
イッセイミヤケの北村みどりさんがエイポックの新作の上衣と妻へのバッグのプレゼント。2日早めのバレンタインプレゼント?
2025.2.13 世田谷区庁舎へ、住居などの説明会に家族が呼ばれるが、特別の用件もなし。
世田谷美術館展の塚田さん来訪。進行のプロセスの説明。
2025.2.14 徳永を始め、バレンタインプレゼントが届く。去年のバレンタインにお礼を書くのを忘れた人からは来ない。こうして縁は切れていく。
昨日から描き始めた作品は自画像。不思議なものを描こうと思って考えた挙句、やはり自分の存在以上に不思議なものはない。だから自画像。
自画像を含む追加作品の複写撮影に上野さん来訪。立ち合いに塚田さんも。
入れ代って、GUCCIの展覧会のキュレーション担当の南雄介さんと芦澤さんを交えて、展覧会の大まかな構想を決める。
2025.2.15 〈どこかの街の古書店の店頭で洋書の写真集を2冊購入と思ったが、お金を持っていなかったので、この街にいる知人の家に借金をと訪ねるが、夕食をいただいて、古書店のことは忘れてしまった〉という夢。
〈どこの大学からか、そこの教授になっていて、生徒の長男をえらい叱りつける〉夢を見る。
9時半起床。深夜一度もトイレに行かず、よく眠ったものだ。
先月、三島由紀夫100年祭で対談した平野啓一郎くんとの『新潮』のゲラに手を入れる。一本の原稿を書くより、うんと時間がかかってしまった。
夜、田島くんの尾崎豊のLPジャケット制作の番組を見るが、この間から田島くんの夢をよく見たのはこのせいかな? だって15~6年も会ってない。
2025.2.16 昨日長時間熟睡のせいか、それともあれこれ考えたせいか、眠れず。
春らしい小さい暖風あり。
頼まれている小品描く。あと、もう2点別のコレクターからの依頼もあるが、気にするだけで腰が重い。デザイナーの頃は頼まれ仕事が全てだったが、画家になると頼まれ仕事は億劫。
海外のファッション関係と出版の仕事が重なっているが、なぜか気が重い。(よこお・ただのり=美術家)