2026/10/23号 7面

日常の向こう側 ぼくの内側 759(横尾忠則)

日常の向こう側 ぼくの内側 759 横尾忠則 2026.10.12 〈わが家に王貞治さん来訪。王さん主催のパーティに招かれていたが、講演のために欠席したが妻は理事長の席に座らせられたと王さんにお礼を言っている〉夢を見る。  食欲がないが睡眠と創作欲は過剰にある。だからもってるのかな。睡眠は体力がないと不可能だという。  アトリエで頭から床に転倒。頭の振動激しく10分ばかり動けず。 2026.10.13 〈妻が家の中を整理していたら、京都の清水さんという人から送られてきたという雑誌の束が出てきたので、妻と京都の嵯峨へ。山間の静かな場所が清水さんの家。近所づきあいがないので住みやすいと。ところが驚いたことに清水さんの家の2、3軒先にぼくのアトリエを建設中で、そのことを知らない妻は90歳になってまたアトリエを作るのと驚く〉という夢を見る。  昨日転倒した頭ではなく首の後ろが痛み始めたので玉川病院の脳外科でCTを撮る。結果は骨に異常はなく、一種のむち打ち症状で、2、3日は痛むと診断。  弁護士の吉村夫妻と会計士の梅田さんが自宅に。相続にからむ遺言の作成など依頼する。 2026.10.14 朝食は焼芋少々。昼は生まれて初めてカップラーメンを。具はないがそばはいける。  アメリカから出版の『YOKOO BY YOKOO』の第一章のまとめが編集者の上原さんから届く。もう少し海外の読者を意識した内容にと変更を要求。  食欲不振激しく、このままでは衰弱死の恐れありと判断して、玉川病院に入院を希望するが、中嶋名誉院長は病気ではないので、治療の方法がないので、入院不要の結論。 2026.10.15 〈夜の銀座。カッターシャツとパンツ一丁になって、脱いだ黒いスーツを手に、クラブの店頭でホステスと、楽しげに歓談している〉という夢。  玉川高島屋のスタッフ4人と来春のイベントの打合せ。食欲不振を心配して夫婦にとお弁当の差し入れ。  午後、高倉健さんの養女の小田貴月さんが、ネットでぼくの食欲不振を知ったと食料品の差し入れに。彼女は栄養学を勉強したらしく、実に専門的にくわしい。2時間ばかり、食欲不振改善のためのレクチャーを受ける。 2026.10.16 〈実家の桜の木をもっと環境のいい場所に移植して、大勢の人に見てもらいたい。できればその近くにアトリエを建てたいと計画する〉という夢を見るが、新たにアトリエを作りたいという夢はなぜかよく見る。この歳になってアトリエばかり建てたがるその心境は何だろう。  次の夢は〈日本の地方の風景の中にハリウッドがスタジオを建てて、その風景を描く日本人画家がいるが、大した風景でもないのに、こんな風景画などよせばいいのにと思う〉夢。  河出書房新社から来年6月にイギリスのテームズ&ハドソンから出版される画集の日本語版には特別の付録をつけたいと編集者の岩本さん来訪。 2026.10.17 糸井重里さんがジャムを作ったので、これなら食べ易いだろうと送ってくれる。また保坂和志さんは食欲不振改善の漢方薬と木の実を送ると葉書来る。どうやら食欲不振で世間を騒がせているようだ。 2026.10.18 〈グループと一緒に黒住教へ。前黒住宗晴教主を訪ねるが、ディズニーの映画を観に行くことを思い出して神戸へ。8時に再び黒住に行かなきゃ。でも、時間がない〉という今週は夢づくし。  12時間の過眠するが食欲なし。  「週刊新潮」の種井さん昼食の誘いに来訪。レストランで洋食を。一口も食べられないだろうと思ったが、レストランの環境や話し相手がいるせいか、食欲はないが、ハンバーグ、サラダ、スープ、シャーベットなどほとんど全部食べる。もしこれがテイクアウトなら一口も食べられないと思う。店に行けばもしかしたら食べられるのかも知れない。食後、ぜんざいが食べたくなって店のはしごをするが、どこの店も超満員。  成城駅前辺りを2時間半ばかりうろつくが、結局種井さんとアトリエに戻って、自販機でコーヒーを買って飲む。  夜、テレビをつけるとどこも食べ物ばかりで怖くなって切る。(よこお・ただのり=美術家)