2026/09/04号 8面

American Picture Book Review 112(堂本かおる)

American picture book review112 堂本かおる ガイコツと猫  ホラー映画に登場しそうな黒装束のガイコツと、不気味で縁起が悪いと言われる黒猫の、静かで、平凡で、ちょっとユーモラスな友情の物語。 全編を通して特別なことは何も起こらないものの、意外な設定ではある。ガイコツに名前はなく、語り手はガイコツを「she」と呼ぶ。つまり女性。美しく手入れされた家に1人で住み、朝は庭のカラフルな花の世話をし、午後はピンクのティーカップでお茶を飲みながら本を読む。毎日がひっそりと満ち足りた生活だ。  そこへ黒猫がやってきて、ドアをノックする。ガイコツと友だちになりたい黒猫に、ガイコツは「ノー」と言う。ひとり暮らしに何の不満もなく、寂しくもない。他者を迎え入れる理由がないのだ。けれど、諦めない黒猫にガイコツは何かを感じ、考えを変えて家に招き入れる。ここまでが第1章「ノック」。わずか6ページに2人の出会いが描かれている。すべて見開きで、右のページが絵、左のページが文章。  続く第2章「サンドイッチ」は愉快。ガイコツはガイコツだからなのか、あまり食事をしないらしく、キッチンの棚はほぼ空っぽ。お腹の空いた黒猫がサンドイッチを作るも、ガイコツはサンドイッチの食べ方がわからない。黒猫がどんなに教えても食べられない。結局、そんなにお腹が空いているわけじゃないしと食べずに黒猫にあげてしまい、黒猫はサンドイッチを2つ食べて満腹になる。生活のすべてをきちんと完璧にコントロールしているガイコツの完璧な家の居候となった黒猫が、ガイコツにサンドイッチについて教えることによって、2人の関係性が対等になったことを示す章なのだ。  第3章「庭」では、ガイコツの、これも完璧に手入れされた美しい庭で黒猫がガイコツに慣れないダンスを踊らせる。第4章「本」では、黒猫が選んだつまらない本でも、安楽椅子に座って黒猫が自分の膝に乗っていると楽しく読めるとガイコツは気付く。ガイコツはそれまでの生活のパターンをまったく変えていないにもかかわらず、黒猫のちょっとした提案で新しいことに挑戦したり、それどころか黒猫の存在自体によって人生がじんわりと豊かになっていく。  最終章「夜の空」でも特別なことは何も起こらない。星がまばゆく輝く夜、2人は夜空を眺めている。ガイコツはいつものように口数が少なく、あれこれ質問をするのは黒猫。けれどガイコツは黒猫のおしゃべりにすっかり慣れてしまい、それを心地よく感じる。もう夜も更けてきたけれど、2人は一緒にいつまでも星空を見つめ続けた。だって2人は友だちだから。  どの章にも子どもならケラケラと、大人ならクスリと笑えるユーモアがある。そのユーモアを通して、子どもたちは静かな友情のあり方に気付くかもしれない。文と絵を手がけたのはカナダの作家、ブランドン・ジェームズ・スコット。(どうもと・かおる=NY在住ライター)