2025/12/19号 6面

短歌

短歌 藤原 龍一郎  大書店の詩歌コーナーの見た目が、近年、きわめてカラフルになっている。老舗の歌集出版社以外の出版社が、いわゆる短歌ブームにのるかたちで、比較的に若い人たちの歌集を出版するようになり、それらのカバーデザインが、カラフルで派手になったわけである。  二〇二五年は若山牧水と北原白秋の生誕一四〇年ということで、「短歌往来」等、短歌専門誌でいくつかの特集がおこなわれた。また角川書店から、伊藤一彦氏の編集で『若山牧水全歌集』が刊行されたのは特筆すべき。全十五歌集プラス未収録歌ほか、それぞれの時代の歌人たちによる牧水論が収録されているのも嬉しい。  北原白秋関連では、傑出した白秋論である渡英子『メロディアの笛Ⅱ』(ながらみ書房)を読んで欲しい。新たな視点からの白秋の真実の像が浮き彫りにされている。  青磁社から刊行された『浜田到作品集』及び『松平修文全歌集』も資料的価値が高い。どちらも文庫サイズ。浜田到の方は詩作品も収め大井学の懇切な解説が付されている。松平修文の方は私家版の句集と詩集も収録、大森静佳の長文の解説が松平の詩魂を論じる。定価も二二〇〇円+税、二七〇〇円+税と抑えられているのもありがたい。  全歌集ではもう一冊、書肆侃侃房の『石川信雄全歌集』を挙げておく。前川佐美雄の同行者として、一九三〇年代に最新のモダニズムを短歌に取り込んだ鬼才である。編者の鈴木ひとみ氏は石川信雄の姪にあたる人。あまり論じられることのない戦後の短歌作品及び資料として価値のある戦地からの手紙も収録されている。  短歌専門誌の企画では、「歌壇」(本阿弥書店)に一月号から十二回連載された小池光インタビュー「言葉とことばの出会い 小池光の戦後短歌史」が出色。聞き手は寺井龍哉。寺井の事前準備が周到で、小池光が歌集ごとの時代背景や具体的な短歌作品の実作上のくふう等々を気持ちよく語っている。現役の歌人が作歌工房の秘密をここまで微細に語ったのは、他に例を思いつかない。ぜひ、早く書籍化してほしいものだ。  大辻隆弘『短歌の「てにをは」を読む』(いりの舎)も中級者以上に向けた文法書。格助詞一つで、一首の短歌が生きも死にもすることを、豊富な具体例で教えてくれる。  川野里子編『短歌って何?と訊いてみた』(本阿弥書店)は、各ジャンルの表現者、研究者十五人との対話集。歌人としての知性、教養のあるべき姿が、行間から滲み出ている。  最後に柏書房から歌人向けではなく、一般書籍として刊行された瀬戸夏子『をとめよ素晴らしき人生を得よ 女人短歌のレジスタンス』を紹介する。長沢美津が創刊した「女人短歌」に集った葛原妙子、齋藤史、片山廣子らのエピソードを紹介、一般読者向けとは言え、文学的なディテールが緻密に語られ、知的な刺激に満ちている。(ふじわら・りゅういちろう=歌人)