2025/12/19号 3面

2025年出版動向

2025年出版動向 丸島 基和  近年、出版関係者から「継続して持続するために~」という言葉を頻繁に聞くようになった。厳しい商環境のなかで、どのようにして次世代に引き継ぐことができるのか。出版社、取次会社、書店――それぞれの事業者がそんな局面にある。  「新文化」では毎年、最終号に10大ニュースを掲載しているが、ここでは個人的な見解として振り返ることにする。  今年はことさら「持続」するための動きが注目された。その最たるものが「国の支援」だった。6月、経済産業省、中小企業庁、文部科学省、文化庁、国土交通省、公正取引委員会、内閣官房新しい地方経済・生活環境創生本部事務局など、中央省庁が連名で「書店活性化プラン」を策定し公開した。  書店の廃業が相次ぎ、無書店自治体が全体の28%にも及んでいる現況に、国が動き始めた。書店再興を目的にした国策は「出版史上初」で、歴史的なエポックといえる。  そのプランは5項で構成された。Ⅲの「業界慣行における課題」においては、経産省が書店、取次会社、出版社、印刷会社の代表や幹部をメンバーにした「返品削減研究会」を設置。同省では、委託制度を運用する特異な産業構造によって生じる「返品率40%台」という非効率性を問題視しており、それを是正することで書店の粗利率改善を図ろうとしている。RFIDについても今後予算を計上して、改革する方針を打ち出した。  「書店の活性化」「文字・活字文化の振興」を大義にして、多くの関係者が動き、「書店と図書館・自治体の連携」「キャッシュレス決済」「POSシステム」の導入」「書店開業支援」「相談窓口の設置」など、多岐にわたるプランが策定されたのである。  そんななか、出版関係者を悩ませたのは各種コストの急騰だった。出版社も取次会社も書店はいまなお、取引先からの値上げ交渉に頭を抱えている。  独禁法上、団体間による値上げ交渉はカルテル行為に抵触するが、団体間で意見を交換し、情報を共有する場を設けてもいた。  10月、印刷工業会と東京都製本工業組合は日本雑誌協会、日本書籍出版協会、日本出版取次協会の業界3団体を訪れている。そこでは用紙、インキなどの原材料費や人件費、運賃などの推移を説明。出版印刷の生産額は2007年に1430億円だったが、24年には約500億円と3分の1の規模に減少。一方で、インキ価格は2000年から1・5倍、CTPプレートに使用するアルミニウムは同様に1・8倍など軒並み倍近く値上がっている。印刷工業会と東京都製本工業組合は「自助努力では持続できない」という。出版社はその〝本気度〟を察知して、書籍や雑誌の定価アップに踏み切るが、「読者の値ごろ感」を憂慮して慎重に対応している。  もっと深刻なのは、本を配送するトラック業界だ。ドライバーの人材不足に加え、燃料の高騰などで運送事業者が激減している。東京では8年間で483社が廃業または撤退したという。  こうしたなかで運賃はさらに値上がり続けた。取次会社がこれに応じなければ、配送会社は出版輸送から撤退せざるをないという。実際にそうした措置をとった配送会社もあった。取次会社は出版社に「協力金」を求める。  追い打ちをかけるように国土交通省は、政府の「物価上昇分を上回る賃上げ」方針に沿って、20年に運送会社に「標準的な運賃」のガイドラインを策定し、今年3月、その基準運賃を8%も引き上げ、6月には国会で「トラック新法」を可決した。  同じ6月、日本出版販売はローソン、ファミリーマートのコンビニ2社の流通を止めて、トーハンに完全移行した。  朝日新聞出版の吉田修一『国宝』が上下巻で計200万部を突破。大阪・関西万博の関連ムックも爆発的に売れるなどヒット作もあって活気づいたが、「持続」をテーマに緊迫した場面が多かった25年だった。(まるしま・もとかず=新文化通信社・代表取締役社長)