2026/05/29号 8面

動画生成AIではじめよう 映画・映像制作

著者から読者へ=『動画生成AIではじめよう 映画・映像制作』(中澤太翔)
著者から読者へ  動画生成AIではじめよう映画・映像制作 中澤 太翔  「今日をもって絵画は死んだ」  十九世紀初頭、写真が発明されたとき、画家のドラローシュはそう嘆いたと伝えられています。でも絵画は死にませんでした。写真という新技術は、むしろ印象派という新しい芸術を生み出しました。  映画が誕生したとき、演劇界は「機械仕掛けの余興」と冷笑しました。音声付き映画が登場したとき、無声映画のスターたちは職を失い、抗議運動が起きました。CGが導入されたとき、「芸術ではない」と批判されました。新技術は、常に反発を呼んできたのです。  いま、「動画生成AI」という新技術が映画の世界に登場しています。これは、文章で指示を出すとAIが映像を自動生成してくれるというもの。「森の中を走る少年」と入力すれば、その通りの映像が数分でできます。ハリウッドでは二〇二三年に大規模ストライキが起き、俳優や脚本家たちがAIへの警戒を表明しました。  しかし私は、この技術が映画を「殺す」とは思いません。演劇が映画に、映画がテレビに置き換えられなかったように、新しい表現形式が加わるだけです。アニメーションやコンピュータグラフィックスが映画の一ジャンルとして確立したように、AI映画もまた、映画という芸術の可能性を広げる新しい表現形式になると考えています。  私は高校時代に推理小説家としてデビューしました。物語を作ることは好きでしたが、映像は別世界の話だと思っていました。映画制作には莫大な資金と大勢のスタッフが必要で、個人が手を出せる領域ではない。そう諦めていました。  しかし動画生成AIの登場で、状況が変わりました。私は映像制作の経験がまったくない状態から、この技術を使ってカメラも俳優も使わず長編映画を完成させました。私の映画『サマー・トライアングル』は、ロサンゼルス映画賞や英国映画祭など、世界十ヵ国の国際映画祭で受賞しました。  ただし、AIは万能ではありません。AIが作る物語は「どこかで見たことがある」ものになりがちです。物語を作り、登場人物に命を吹き込み、観客の感情を設計するのは、あくまで人間の仕事です。本書では、その「人間が担うべき領域」と「AIに任せる領域」を明確に分けながら、制作の全過程を解説しました。  「いつか映画を撮りたい」と夢見ていた方へ。新しい技術が開く可能性を、ぜひ本書で感じていただければ幸いです。(なかざわ・たける=AI映画スタジオ「スターゲイザー」代表/映画監督)

書籍

書籍名 動画生成AIではじめよう 映画・映像制作
ISBN13 9784274234699
ISBN10 427423469X