日常の向こう側 ぼくの内側 756
横尾忠則
2026.9.17 西脇の丸萬商社の丸山さんと技術者の上田さんが、以前和紙で制作した作品を織物で巨大化したものを持参。この西脇独特の技術を何とか現実化した作品にしたいと思う。
南條史生夫妻と秘書の宮原さん来訪。磯崎新さん設計のアトリエなので、何とか後世に残せないかと南條さんからの提案に同意する。
2026.9.18 食欲不振の朝食。久し振りに自転車通勤をするがまるで馬の吐息だ。
「新潮新書」の第2弾のタイトルは『孤独と戯れる』。「週刊新潮」の連載エッセイから孤独が通底するものを葛岡晃さんが抜き出して編集したもの。
長野から一時帰京している北沢さんが長野のぶどうを持参。今年は雨が多いので物凄く甘くて美味い。
2026.9.19 今日からシルバーウィーク5連休。アトリエのスウェードの屋根から雨水が天幕に溜まっているので、メンテナンスが始まったが、大工事になる可能性あり。
2026.9.20 〈南紀州の海に面した高台の土地が売りに出ているので、もう一軒アトリエを作るために買うことにしたので、妻も見に来る。2人で浮き浮き気分になる〉ところで目が覚める。
連休の2日目だけれど実業之日本社の村嶋さんが「村上春樹さんから横尾さんにとサイン本をあずかっているので持参した」と。また以前出した『飽きる美学』がロシアの出版社から出ることになって装幀見本を送ってきたと。この本をプーチンが読んで戦争に「飽きた」と言って戦争が終結すれば、この本でノーベル平和賞を獲れないかなと妄想する。ついでにウクライナ語でも出版して、ゼレンスキーにも「戦争は飽きた」と言わせたいね。
夕方から雨。美美がアトリエに車で迎えに来てくれる。
2026.9.21 朝食の食欲相変らず0。美美が来て餅を焼いてくれたので食欲出る。
午後雨のせいでテレビの電波乱れたために大相撲中継不通状態だったが三役が登場の頃にやっと修復する。
妻が部屋でひっくり返って床から立ち上れず、起こすことができなかったが、便所が雨で故障を直しに来てくれた風間が一気に妻を立ち上らせた。小さい彼がどこからあんな力を出すのか感心する。
夕食は桂花からの中華のテイクアウトものを、珍しく妻は半分食べる。
終日ベッドの中でゴソゴソする。
2026.9.22 〈桜の咲く公園で写生をする〉気持ちのいい夢を見る。
〈展覧会に若い画家がぼくのモチーフのY字路を描いて出品しているが、ぼくがどうしても描けなかった部分を見事にこなしているのにはびっくり〉する夢だが、ぼくに代って若い画家がぼくに技術の秘密を披露してくれた。夢は秘密の通路である。
昨日に打って変って快晴。涼風もあって快適なので、運動を兼ねて自転車通勤。
平野啓一郎くん来訪。最近ニューヨークのエージェントと契約を結んだので今後の本は海外から出版されることになり、いきなり国際作家への道が開けるかも知れない。平野くんと一緒に食事をすると思いがけないほど食べた。
夕食も沢山食べた。妻もつられて食べた。
2026.9.23 昨日、昼夕と食欲あり。そのせいか今日は全く食欲なく、ほとんど食べられない。
東京都現代美術館の藤井さんと石川さん来訪。予算がないという景気の悪い話ばかり。こんな話が日本中の美術館全部に伝染しているらしい。海外の美術館や出版社との仕事が多い昨今、日本みたいに景気の悪い話などいっさい出ない。日本は予算を先行させるが、海外は予算よりも面白いことができるかどうかで展覧会を計画する。日本はお金、お金ばかりの話で、嫌になって飽きた!日本は文化芸術から滅びていくような気がする。(よこお・ただのり=美術家)
