日常の向こう側 ぼくの内側
横尾忠則No.680
2025.2.17 〈皇居の一般参賀で小学5年生の男子が描いた絵が表紙になった小冊子をその子供が飛び入りで出席して天皇皇后両陛下に手渡すハプニングが起こった。天皇陛下は笑みを浮かべてその絵をご覧になられたが、雅子さまはその絵を適確に批評された〉という夢を見る。次の夢は〈読売新聞の全5の広告に掲載されている写実的な人物画の上にぼくの朝日新聞の書評そっくりのタテ組とヨコ組を交互に組んだ文章が掲載されているが、これは横尾さんの書評のパクリだと朝日の記者が批判する〉という夢。夢の中の他者は結局全部自分かも知れない。
「プレジデント」のロングインタビューの取材に8人も来訪。そんなに椅子がなく困った。
2025.2.18 伊東豊雄さんと矢部倫太郎さん、力武真由さんが自宅に来訪。妻を交えて家の相談をする。
「産経ビジネス」のこれもロングインタビュー。実業之日本社の村瀬さんの紹介で『金持ち貧乏人』と題する本を出版するという橋本浩さん来訪。ぼくのテリトリーにない人だけに非常に面白かったが、今日は質問攻めに合うが、次回はこちらが質問攻めにしたい。
2025.2.19 河出書房新社からテリー・ライリーさんの本を出すので、テリーさんに対するインタビューを受ける。
ベルリンでポスターの個展が進行しているが、全作1000点を収録した豪華ポスター集の出版を打診される。ロンドンのテームズ&ハドソンから500頁の画集の出版と重なるので時期をずらせないかと、交渉しなきゃ。
目下編集中のロンドンからの画集の掲載作品の変更の作業が大仕事。
イタリアの車のコレクターから車のボディペインティングを依頼されているが、そろそろ制作に入りそう。向こうから車を送ってくると言う。
以前、ベンツのボディペインティングをした車のコレクター、この人は日本人だが、中国の国立博物館にその車を展示することになっていて、同時にぼくの絵画展を、その博物館でしたいと打診あり。こう次から次へと海外からのオファーが殺到すると考えるだけで疲れる。
2025.2.20 〈小林旭の「スター」という映画に彼が久々の映画出演。それを郷里の西脇の蓬莱座に観にいく〉という夢。
朝日新聞の書評編集長の柏崎さんと編集部の星野さん来訪。時々会って、とりとめもない雑談会を定期的にしている。忙しい時の息抜きになる。
世田谷美術館の最後の出品作の撮影と、ポスターの校正などが出るので塚田さん来訪。
もう5日目になるが首が痛くって。明日病院へ行こう。
神戸の灘高校から講演会の依頼。むしろ、こちらから東大受験生の考え方を聞いてみたいぐらいだ。
2025.2.21 玉川病院へ。名誉院長の中嶋先生の診断というか治療は首をマッサージしてもらうだけで快適。湿布と消炎剤スティックとマッサージで治りますと病人扱いされず。病院のコンビニで買った弁当をアトリエで食べるが不味い。
GUCCIと豊島横尾館の合同プロジェクトの下見にキュレーションの南雄介さんに豊島に行ってもらう。このプロジェクトの出品作の新作自画像の制作にとりかかる。
2025.2.22 映画プロデューサーの山口晋さん、有馬千春さん来訪。進行中の映画はこのままでは続行不可能と察し、延期を要請する。
夕方、マッサージへ。首に続いて膝が痛む。
2025.2.23 三島由紀夫さんが森鷗外の「百物語」は近代を超えようとしていると語ったことがあるが、ぼくの子供の頃から今に至るまで幽霊や怪奇現象を何度も体験しているが、すでに近代以前の人間ということになるのかな。だから時代とズレているのかも知れない。(よこお・ただのり=美術家)