2026/05/01号 7面

日常の向こう側 ぼくの内側 736(横尾忠則)

日常の向こう側 ぼくの内側 736 横尾忠則 2026.4.20 〈大劇場で高橋幸宏くんと対談するのでステージで待つこと小一時間。やっと来たと思ったら「劇場の風呂に入っていた」と言うので怒ったぼくは彼が絶対脱がない帽子をもぎ取ったら、頭をかかえてステージを走り廻っていた〉という夢を見る。  〈成城の駅前を歩いていたら石原裕次郎の歌が聴こえてきたので思わず石原邸に向った〉という夢。  もう下剤は効かなくなったので水野クリニックで2度目の浣腸を試してもらう。  パリのポンピドゥーセンターのローラン・ルボン館長と長男、長女来訪。子供は日本が初めてなので天ざるそばを皆んなで食べる。来訪の目的は私事に関することなど様々。ぼくの10代のポスター作品を見て、「まるで昨日描いたみたい」と面白い批評。  日本道観の早島妙聴先生より便秘の導引術の処方をメールで。  宛名もなく誰かによって大きい花束と小さい花束二つが家の玄関の前に置かれていた。何のために誰が? 2026.4.21 〈寝室の横に道路ができて大勢の人の往来が始まった。急に都会のど真中に寝室が瞬間移動したようだ〉という夢を見る。  糸井重里さん、管野さん、倉持さん来訪。糸井さんが便秘対策サプリメントなど、便秘のプロみたいに色々指導してくれる。パルコで何か物を展示しないかという話。 2026.4.22 午前中、玉川病院で腸のCTを撮る。CT上では便秘は問題ないが、腎臓の薬の副作用で体内メチャメチャになったので、あの薬は止め。泌尿器科と内科の診断はまあまあ、そこそこで特別の問題はなしというが?  院内で中村雅俊夫妻に久し振りで会う。「今から増田屋に行く」と言う。増田屋に行くと、この間、中村さんが来られたと。 2026.4.23 尿が出にくかったが、薬と関係なく、便秘に代って、急に出るようになった。  アトリエで「週刊新潮」のエッセイ2本書く。すでに7月分まで3ヶ月間の原稿入稿済み。  昨日玉川病院で撮ったCTの映像を水野クリニックで見てもらった結果問題ないが、浣腸はクセになるので中止になる。やゝ心細いが帰宅と同時に突然便秘が解消! 何んで?「便秘を楽しんで便秘と遊ぼう」と言ったことが言霊になったか。まるで奇跡的に解消! ウソみたい。 2026.4.24 この間から顔を出さなくなった野良猫のおお黒を妻はいつも気にしていたが、今日庭に突然やってきたので妻は大喜び。いつも夕方、玄関にエサを出しているので、満腹のため朝は来ないのでは。だからエサを少なくしたので、お腹がすいて朝やってきたのだろう。  ACCという企業誌でY字路の取材。 2026.4.25 〈東京へ行くことになった。難波英夫さん同行。ひとりでは難聴で人と会話ができないので助かった。電車がなく鉄道沿いに歩く。徳永も同行。場面変って、自宅の風呂に入っている時、表から家の壁を叩く者がいる。玄関のブザーが機能しないらしい。一体何事だろう〉と思う夢。  一昨日、通じがあったのに、再び便秘三昧。便秘は実に気まぐれで主人そっくりだ。  と思った途端、内臓まで飛び出したのかと思うほど躰の中が空洞になってしまった。人間空洞説だ。便秘はイリュージョンで存在しないものだと思うべきかも知れない。 2026.4.26 鉄の彫刻家クマさんこと篠原勝之さんが死去84歳。また知り合いが一人。  遺作シリーズ20点目に取りかかる。ドラクロワとデュシャンを対峙させる。水と油のように見えるが、時代を越えてロマン主義者? デュシャンがロマン主義者。あの便器はロマン主義以外ないでしょ。  夕方、帰宅すると再び、今度はおお黒が玄関のエサを食べに。「おお黒、おお黒」とやかましかった妻が、玄関のおお黒をチラッと見るだけで満足。  ドジャースvsカブス、佐々木やっと1勝。(よこお・ただのり=美術家)