American picture book review 106
堂本かおる
少女と父親がカウボーイ文化を通じて強い絆を育み、その様子を鮮やかな色彩と大胆な筆致で描いた楽しい絵本だ。ただし父子の物語の背景には複雑な移民の歴史が詰め込まれている。
アメリカは移民の国であり、移民の親からアメリカで生まれた二世や三世も、その多くは祖国由来のコミュニティに属し、祖国の文化を多かれ少なかれ受け継いでいく。アメリカでの移民といえばラテン系、アジア系が想定されるものの、黒人にも白人にも移民は存在する。
本作『私のパパはカウボーイ』は、表紙を見ると父親の髪型がロックス(*)であり、そこから「カリブ海系かな?」と思わせる。アメリカにも「カリブ海系=ジャマイカ人」のステレオタイプがあるが、ロックスはジャマイカだけでなく、カリブ海諸国に浸透している髪型だ。 *これまではdreadlocks(ドレッドロック)と呼ばれてきた髪型だが、近年はdread(恐ろしい)という言葉を避けてlocs(ロックス)と呼ぶことが増えている。
実のところ、この父親はパナマ系二世だ。パナマは中米にある国だがカリブ海に面していることからカリブ海文化を持つ。物語に登場する祖母はパナマからの移民であり、モーニング・コーヒーを飲むマグカップはパナマ国旗のデザインだ。この祖母を、主人公の少女は英語話者だが「グランマ(英語でおばあちゃん)」ではなく、スペイン語でおばあちゃんを意味する「アブエリータ」と呼ぶ。パナマはかつてスペインの植民地であったことからスペイン語だけでなく、その文化も引き継いでおり、そこからカウボーイ文化も持つ。カウボーイはリベリア半島起源で、それがアメリカやメキシコなど北米にも伝播したものだ。こうした複雑な文化を無理なくすんなりと内包しているのが、主人公の一家だ。さらに、カウボーイと言えば広大な土地にある牧場に属すると思ってしまうが、この一家は都市部にあるパナマ系コミュニティに暮らしている。
土曜の朝、まだ真っ暗なうちに父と少女だけが起きる。商店が立ち並ぶ街の通りを、人や車がいない早朝に馬に乗って通り抜けるためだ。こんな街中に厩舎があろうとは、多くの人は知らない。まずは父の馬、少女のポニーにリンゴを食べさせ、たてがみをなで、ブラッシングする。単なる動物の世話ではなく、二頭との親密なコミュニケーションだ。それが終わると二人はそれぞれの馬にまたがり、街に繰り出す。少女の好きなケーキ屋、母親がよく通っているコーヒーショップの前を通る。真っ暗だった空は少しずつ明るくなっていく。やがて通りに通行人が少しずつ出てきては、笑顔で父子に手を振る。カウボーイはパナマ系コミュニティが誇る文化的な存在なのだ。
乗馬を終えて自宅に戻った少女は考える。馬も街も空の色も全て素晴らしい。けれどいちばん素敵だったのは、パパと二人だけの時間を持てたこと。そして、誇らしげに思う。自分もまた、パパと同様にカウボーイなのだと。(どうもと・かおる=NY在住ライター)
