著者から読者へ
13歳からの家族の研究
白井 千晶
「家族」って、人によってイメージがいろいろなのに、なんだかみんな同じ家族像をもっているような「幻想」があると思います。「家族のような」安らぎが広告に使われたり、「家族の一体感が壊れる」と抵抗されたり。家族のもとで温かな時間を過ごす人もいれば、家族がしんどい人も、家族と呼びたい人がいない人もいます。
私は社会学研究者なのですが、人生そのものが社会学と感じて、いろいろなことがあるたびに、「これはフィールドワークだ!」と考えてきました。眺め、観察し、書き留めてみると、なんと面白いことか。「家族の研究」もまた、誰にでもできるし、誰にとっても新鮮で、また力になるのではないか。自分は研究される客体ではなく、研究する主体である、という「当事者研究」と同じ源流でもあります。
お題目のように多様性とかダイバーシティと唱えても、そもそもそこからイメージすることさえ人によって違うので、『家族の研究』では、より具体的に、古今東西のこれは!と思う、でも身近なトピックを入れてみました。例えば、名前。夫婦別姓が議論になっていますが、姓も名も変わりうる歴史と現在の制度をもっていること。例えば織田信長の名前の示し方は? 姓がない文化もあること。現代日本で法律婚をしても夫婦別姓でありうること、など。
親は一組というのがデフォルトというのも、普遍的ではありません。いやむしろ、親や親族をどんどん増やしていくのがセーフティネットでもありました。例えば三重県答志島では現在でも、育ちあげのところで男子が仲間と「朋輩」を組み、寝屋親を定めて世話になる寝屋子制度があります。
かつての長屋では、井戸や便所を共有していました。日本では異性のきょうだいも親子も共寝して、居間、仏間と機能別に間取りが組まれていましたし、ふすまを外せば結婚式も葬式もおこなえる開かれた家屋でもありました。家族が「マイホーム」に閉じられるようになった歴史は新しいのです。
そのほか、国籍、ジェンダーとセクシュアリティ、子どもの権利、ヤングケアラー、障害、養子縁組や里親制度、精子提供や卵子提供などなど、様々なトピックから「家族」を眺められるように組みました。思春期の今まさに家族のことでモヤモヤしている人にも読んでいただけるように、「13歳からの」研究として書きました。もちろん、大人も研究を楽しめます。我が家には理系男子がいて、彼らにも読んでもらえるように想像しながら書いたのですが、「ジェンダーの話もしようよ」と言ったら、「うーん、分子より大きいことは、よくわからないや」と言われてしまいました。でも、なんだかんだ、ジェンダーの話も政治の話も楽しくしています。皆様も、ぜひ。(しらい・ちあき=静岡大学人文社会科学部社会学科教授・ジェンダー研究所所長・家族社会学・医療社会学)
書籍
| 書籍名 | 13歳からの家族の研究 |
| ISBN13 | 9784780314069 |
| ISBN10 | 4780314062 |
