2026/08/21号 7面

日常の向こう側 ぼくの内側 750(横尾忠則)

日常の向こう側 ぼくの内側 750 横尾忠則 2026.8.3 〈アニメ映画を作りたくなって、かつて制作した頃の情熱に再び襲われる〉という夢を見るが、目覚めるとそんな情熱は微塵もない。  妻の見舞に行く予定だったが、体調が悪く、徳永と長男の英が行く。妻は尿路感染症で以前ぼくがなった病と同じ。病院嫌いの妻だが、今回はしっかり治るまで入院するといっているらしい。 2026.8.4 倦怠感、激しく食欲なし。  長野に帰省していた北沢さん来訪。ベルリンでのポスター展関係の人達8人ばかり来るというが、全員と対応できないので北沢さんのみ。  玉川病院に徳永、妻の見舞に。  妻と同様、全く食欲なし。 2026.8.5 〈映画館で席についていると、そこは私の席ですと追い出され、席を替ると、また人が来て「そこは私の席」と追い出される〉夢を見る。  『文學界』の連載の担当が決まったと豊田さん来訪。  午後、定期診断に玉川病院へ。入院している妻を見舞う。入院を覚悟したと思ったらまた気が変って退院したいと先生を困らせている。 2026.8.6 早朝5時に電話あり。もしや妻に何かがあったのかと驚くが、電話は切れる。  高橋睦郎くんと井上隆史さん来訪。高橋くんとは昔の話に花が咲く。 2026.8.7 実業之日本社の村嶋さん来訪。  妻、今日からリハビリが開始されるが、相変らず食欲なしは僕も同じ。  夜、ヘアーカットへ。 2026.8.8 「週刊新潮」の種井さん来訪。神戸屋へ夕食に。6時間近く話していた。 2026.8.9 美美が西武渋谷店閉店記念の忠犬ハチ公の展覧会に出品すると絵を持ってくる。昼食を彼女がテイクアウトしてくれる。妻の見舞に行ったが、食欲はないけれどプリンは食べたと喜ぶ。  終日、自宅のベッドの上で自伝書く。 2026.8.10 愛知県美術館の平瀬礼太館長と長屋さん、中野さん来訪。コレクションの件で。 2026.8.11 フランスのポンピドゥー・センターがポスター1000点コレクションだって?  終日、家で自伝書く。  とにかく食欲ない。何を食べても不美味。 2026.8.12 2週間ぶりで妻退院する。電話で「もう病気じゃない」。よかった。  東京国立近代美術館の成相さん来訪。1964年制作のピンクガールシリーズをコレクターから購入の話など。 2026.8.13 昨夜ぬるい風呂に入ったからか、朝やや風邪気味。葛根湯一発で治る。  東京国立博物館の松嶋夫妻来訪。コレクションの件で。ポンピドゥー・センターが全ポスターをコレクションするなら、東博だって?  この間神津さんにプレゼントされた補聴器は玩具のようだけれど最高の性能。複数の人達の会話もキャッチできる。 2026.8.14 アトリエの所蔵作品が次第に少なくなってきた。各美術館への配布が始まった。しかるべき所にしかるべき作品がコレクションされなきゃいけない。  夫婦共々食欲がでない。困ったものだ。  深夜急に動悸が激しく、心配になるが、何も考えないで眠る。 2026.8.15 朝、昨夜の動きは安定。ホッ。  歩行、自転車中止しているので美美が車でアトリエへ。  次作のアイデアのスケッチを取る。  夕方、美美が自宅まで車で。 2026.8.16 ぼくはなんでも早くやってしまうので、他の人とのペースが合わない。  海外は夏休みのせいか、連絡が取りにくいことが多々続いている。  ドラクロワvsデュシャンの次の作品にとりかかる。このシリーズ、いったいどんな結末に。作品は増える一方だが、発表の時も場所も未定。(よこお・ただのり=美術家)