2026/07/24号 9面

「読書人を全部読む!」39(山本貴光)

読書人を全部読む! 山本貴光 第39回 デジコレで当時の出版状況を垣間見る  何度か述べたことではあるけれど、こうして「週刊読書人」のバックナンバーを読み続けていると、頭の片隅にその時代への注意というか関心のようなものが常駐するようになる。少なくとも週に一度はどの号のどこに注目してみようかと考えるわけだし、それ以外のときにも時間を見つけてバックナンバーを読んでいるのだから不思議はない。  そんなこんなで目下は他のことをしているときにも、1959年、昭和34年あたりが気になっている。といっても自分が生まれる前の時代のことだけに、経験のない過去について各種の記録を頼りに思い描くほかはない。ただ、よく知らないという自覚がある分だけ、分からないので調べてみようということにもなる。それで古い本や雑誌をデジタル・アーカイヴで探して読むのに加えて、現物があれば買って読んだりもしている。「読書人」のバックナンバーを読めば読むほど本が増える道理である。  それはさておき、当時の状況を思い描くための一環として、この仕事にとりくみ始めてから試していることがある。と言ってもたいしたことではない。国立国会図書館デジタルコレクション(デジコレ)のデータベースで、時期を指定して検索するという手だ。「出版年月日」を1959年で検索すると47095件の資料がヒットする(この点数は検索の仕方で微妙に変化する)。図書が18503件、雑誌が18121件含まれる。  この検索結果から、例えば図書に絞って刊行の古い順にリストを眺めてゆき、気になる本があればチェックするわけだ。参考までに触れると、1959年の出版状況を総括した『出版年鑑1960年版』(出版ニュース社、1960)によれば、1959年1年の新刊書は13634点、重版は10518点で都合24152点とのこと。これもデジコレでの閲覧である。  年間の新刊が6万5千点台(総務省統計局のデータによる)の現在に比べるとかなり少ないとも言えるが、1万8千件の書名だけでもデジコレの画面で眺めると、それなりの時間を要するのはご想像の通り。1画面に最大100件表示なので、通して眺めるには都合180画面以上を目にすることになる。これを辛いと感じるか楽しいと感じるかは人によるかもしれない。私は幸か不幸かとても楽しく感じてしまう質なので、検索結果を行ったり来たりしては、「わ、こんな本もあるんだ」とその場で「閲覧可能」なものなら中を覗き、閲覧不可なら古本を探しにいく、とこういうわけである。  この調査の困るところは、楽しい代わりに時間とお金がいくらあっても足りないのと、コンピュータの画面ごしに書誌を眺めているだけでは、それらの書物群に対する土地勘というか、どこになにがあるといった感覚が生じてこないところ。これをなんとかできないかしらと試行錯誤しているものの、まだ「これでどう?」とお伝えできるようなものにはなっていない。  それから、将来的にそうなるといいなと密かに思うのは、データベースで「読書人」のバックナンバーを読む際、記事に出てくる本や雑誌がデジコレにある場合、クリック一つで見に行けるという仕組みである。アイデアは言うだけならただなので書き留めておこう。(やまもと・たかみつ=文筆家・ゲーム作家・東京科学大学教授)