2025/12/26号 13面

「読書人を全部読む!」17

読書人を全部読む! 山本貴光 第17回 ようこそ、宇宙世紀へ  1959年はじめの号を読んでいると、「宇宙旅行」とか「ソヴィエト・ロケットの衝撃」といった語が目に入る。  なにかと思えば、同年1月2日(UTC)にソヴィエト連邦が打ち上げた月探査機ルナ1号を指すようだ。そういえば、1950年代末は、米ソが国家の威信を賭けて宇宙開発競争を本格化しはじめた時期だった。ついでながら振り返っておくと、1957年10月にはソ連が、人類史上初となる人工衛星スプートニク1号を、さらに11月にはライカ犬を乗せたスプートニク2号も打ち上げている。アメリカ初の人工衛星エクスプローラ1号が宇宙に送り出されたのは、翌年1958年2月のこと。  ルナ1号の打ち上げ成功を受けて、「読書人」1959年1月12日(257号)の「自然科学」面では、「宇宙問題にたいへん関心を持っている」という荒正人(1913-1979/46/評論家)に、専門家へ向けた6つの質問を出させている。要約すれば、①月に到着するロケットの成功は間近か。②有人月ロケットの実現はどんな段階を踏むか。③アメリカがロシアに追いつくには10年かかると考えたが見通しはどうか。④火星や金星、太陽系の外への宇宙旅行の可能性はどうか。⑤世界平和にとって、米ソ間の宇宙ロケット技術と軍事転用の競争はどのような状況になるのが望ましいか。⑥日本はこの宇宙開発に直に関係していないが、宇宙旅行という事業に参加するにはどのような条件が必要だろうか。という具合で、その後の経緯を知る立場からつい答えをお伝えしたくなる。  この質問に答えるのは、東大生産技術研究所の糸川英夫(1912-1999/47)、宇宙旅行協会の原田三夫(1890-1977/69/科学評論家)、「自然」編集長の小倉真美(1907-1967/52)の3名とのことで、荒正人の質問が掲載された次の号に彼らの回答が載る予定だ。それについては次回眺めることにして、いま読んでいる自然科学面をもう少し見ておこう。  銀河の写真とともに「有限無限の宇宙空間/直接観測では確かめられぬ」という見出しが目に入る。島村福太郎(1921-/38/東京学芸大学助教授・天文学専攻)による「起源ものがたり」という連載で、「宇宙の巻①」とあるから連載のようだ。その冒頭で、著者はやはりソ連の月ロケット打上げ成功に触れて「世はまさに宇宙時代の感を深くした」と述べ、1957年のスプートニク1号打上げ成功から宇宙時代が始まったことを確認している。それに続いて中国の古典『淮南子』に見える宇宙の意味や英語のuniverseを古代ギリシア語に遡って確認したかと思えば、当時知られていた宇宙の姿に触れ、果たして宇宙は無限か有限かという古来未解決だった問題を提示して、アインシュタインの重力理論から推測される宇宙のかたちに話が及ぶ。巧みな筆運びの宇宙案内に、書評紙を読んでいることを忘れる。  なお、「ソ連は遂に「人工惑星」を打ち上げて、またしても凱歌を奏したが、もうこうなれば、地球の上のちっぽけな角突あいはあほらしいことだ」とは、1面の「泡言録」というコラムの言葉。(やまもと・たかみつ=文筆家・ゲーム作家・東京科大学教授)