2026/07/03号 7面

American Picture Book Review 110(堂本かおる)

American picture book review 110 堂本かおる 原題にある「Kindness」は「親切」と訳されることが多いが、「優しさ」「思いやり」の意味もある。本作『優しさのABC』は子どもに他者への優しさ、思いやり、親切の方法をアルファベットの26文字を使って伝えるもの。 幼い子どもに「お友だちに優しくしようね」と言っても抽象的過ぎるかもしれない。どんな行為が優しさ、思いやり、親切になるのか、その具体例を26種示すのが本作だ。これを読むと大人でさえ優しさにはいろいろあるのだと気付かされる。 「DはDonating(寄付する)」。毛布をアニマル・シェルターに寄付した子どもと、もらった赤い毛布にくるまって心地よさげな犬が描かれている。子どもは寄付という行為があることを知り、その行為のシンプルな作用(自分が何かをあげる→もらった相手は嬉しい)を知る。 「HはHelping(手助けする)」。子どもが洗濯するお母さんのお手伝いをしている。これも(自分が手伝う→お母さんが助かる)と具体的に理解できる。手伝ってくれた子どもとお母さんがハグしており、手助けは愛情の示し方でもあると知る。 自分が優しさを実践すると、他者の優しさの行為にも気付く。「NはNoticing(気付く)」。学芸会の舞台で友だちの折れ曲がった衣装をそっと直す女の子。その様子をすべての観客が見ている。 抽象的な優しさもある。「UはUnderstanding(理解)」。ふたりの子どもがそれぞれ積み木でタワーを作っている。「誰でもそれぞれ自分のやり方があるんだよ」「...そして、どっちがより良いってことはないんだ」と書かれている。自他に違いがあることを知り、自分とは違う他者を認める。これも寛容、優しさのひとつだ。 「IはIncluding(含む)とInviting(招く)」。中南米系、黒人、アジア系、白人、歩行器を使う子。パーティにいろんな子どもが招かれている。「UはUnderstanding(理解)」で自他に違いがあることを学び、だからこそ違いを超えて、皆で一緒に楽しく遊ぶ。 さらに深い優しさの感情があると伝えるページがある。「EはEmpathy(共感、他人の気持ちや感情を理解すること)」。しょんぼりとうつむく友だちの肩に手を回す女の子。「他の人の立場になって考えてみると、どんな気持ちになるかな?」とある。「YはYou(あなた)」。他者への共感と同様に、自分に優しくすることも必要と知る。「なぜなら、あなたも大切だから!」 「GはGratitude(感謝、感謝の気持ち)」。毎晩ベッドの中で、その日にあった感謝したいことを思い出す。それは友だちだったり、アイスクリームだったり、オモチャだったり。1日をポジティブな感情「ありがとう」で終わらせ、ぐっすりと眠る。そして翌朝、友だちや家族と優しさ、思いやり、親切をやり取りする新たな1日が始まる。 私たち大人は、どれほど実践できているだろうか。(どうもと・かおる=NY在住ライター)